地震のあと、家に貼られる赤・黄・緑の紙は何?被災建築物応急危険度判定の見方【広島市・東広島市】

穏やかな住宅街の一戸建ての前で、ヘルメットと腕章をつけた建築士がクリップボードを手に住民へ説明しているイラスト。赤・黄・緑の3色のアイコンと判定ステッカーを添えた、広島市・東広島市の被災建築物応急危険度判定のイメージ

※この記事は、合同会社インハート 代表(二級建築士・二級施工管理技士)が解説しています。制度の内容は 2026年8月時点 で広島県・内閣府の公式ページを確認したものです。最新の情報と、実際の災害時の対応は、必ずお住まいの市町の公式発表でご確認ください。

✅ この記事の結論(先にお伝えします)

  • 大きな地震のあと、被災した建物には 赤(危険)・黄(要注意)・緑(調査済) の紙が貼られることがあります。これは「被災建築物応急危険度判定」という、余震などによる二次災害から人命を守るための応急的な調査です(広島県・2026年8月時点)
  • 赤は「全壊」の認定でも、取り壊しの決定でもありません。緑も「耐震性がある証明」ではありません。あくまで判定した時点の、応急的な情報です
  • この判定は、罹災証明のための調査とは別のものです。内閣府も「危険と判定された住家が必ずしも全壊・半壊と認定されるとは限らない」と注意を促しています
  • 正規の応急危険度判定は、住民に費用を請求したり、その場で修理契約を勧誘したりする活動ではありません。腕章・登録証を確認し、不審な場合は市町の公式番号へ照会してください
  • 判定は、被災直後から短期間で実施される応急活動です。平時のうちに表示の意味を知っておくと、発災時の確認に役立ちます

2026年7月28日に発生した令和8年熊本地震では、2026年8月1日から八代市で応急危険度判定が始まったとNHKが報じています(2026年8月5日確認)。被害に遭われた方に、心よりお見舞い申し上げます。

広島でも、大きな地震のあとに、市町が必要と判断した地域で同じ制度が実施されることがあります。ところが、実際に自宅の玄関先に赤や黄色の紙が貼られたとき、「これは何なのか」「入ってよいのか」「誰に聞けばよいのか」を落ち着いて判断するのは簡単ではありません。この記事では、広島県が公表している内容にもとづいて、紙の色の意味と、貼られたあとに何をするかを整理します。


目次

地震のあと、建物に赤や黄色の紙が貼られるのはなぜですか?

大きな地震で被災した建物は、本震で傷んだ状態のまま余震を受けることになります。傾いた建物が倒れる、外壁や窓ガラスが落ちる、設備が転倒する——こうした「地震のあとに起きる被害」から人命を守るために行われるのが、被災建築物応急危険度判定です。

広島県は、この判定の目的をこう説明しています。

大地震により被災した建築物を調査し,その後に発生する余震などによる倒壊の危険の程度や外壁・窓ガラスの落下,付属設備の転倒などの危険の程度を判定することにより,人命にかかわる二次的災害を防止することを目的としています。
(広島県「被災建築物応急危険度判定について」・2026年8月5日確認)

ポイントは、守る対象が「建物」ではなく「人命」だということです。判定は建物の資産価値や被害額を測るものではなく、判定時点における、余震による倒壊や外壁・窓ガラスの落下、付属設備の転倒などの二次災害の危険度を、応急的に確認する作業です。

判定を実施するかどうかは、被災した市町の災害対策本部が、被害の状況をふまえて判断します。広島市や東広島市で大きな地震があった場合も、自動的に必ず実施されるとは限りません。また、市町が面的に実施する公的な応急危険度判定は、平時に個人が予約する点検サービスではありません。発災後に個別の確認を希望する場合も、判定士や施工会社へ直接依頼するのではなく、まず市町が公表する対象地域・受付方法をご確認ください。


「危険」「要注意」「調査済」は、それぞれ何を意味しますか?

判定結果は全国統一の3区分で、建物の見やすい場所に紙(ステッカー)が貼られます。居住者だけでなく、通行人や近隣の方にも危険が分かるようにするためです。

表示広島県の説明実際にどう受け止めるか
危険その建物に立ち入らないこと自分の判断で入らない。家財の持ち出しも行政・専門家の指示を受けてから
要注意立ち入りには十分注意すること「注意すれば自由に使える」ではない。注記事項を必ず読む
調査済建物は使用可能であること判定時点の応急的な判断。将来の安全を保証するものではない

出典:広島県「被災建築物応急危険度判定について」(2026年8月5日確認)。右列は同ページの内容をふまえた当社の補足です。

紙には判定結果だけでなく、注意すべき箇所などの注記が書き込まれることがあります。色だけを見て判断せず、書かれている内容を安全な場所から読んでください。

色を読み違えないための4点
赤だけで、全壊・解体・修理可能といった最終的な扱いは判断できません。復旧の可否は、別途、建築士などによる詳細な調査が必要です
黄は「注意すれば大丈夫」ではありません。どこが危ないかは建物ごとに違います
緑は耐震性の証明ではありません。「判定した時点で、応急的に見て使用可能」という意味です
判定後に強い余震があったり、雨で状態が変わったりした場合、以前の色だけを根拠に行動しないでください


応急危険度判定で分かること・分からないことは?

判定は短時間で行う応急的な調査です。できることとできないことをはっきり分けておくと、被災後に無用な混乱を避けられます。

分かること分からないこと
判定時点における、建物への立入り・使用上の注意避難指示の解除や、周辺地域を含めた帰宅の可否
建物本体や外壁・窓ガラス、付属設備などに、余震による二次災害の危険があるか修理にいくらかかるか
立ち入る際にとくに注意すべき箇所罹災証明の全壊・半壊などの区分、地震保険で支払われる金額
この建物の耐震性能(耐震診断の結果)

※擁壁・のり面・宅地の危険度を扱う「被災宅地危険度判定」は、別の制度です。

つまり判定は、「これからどうするか」を決める前の、安全確保のための最初の一手です。修理・解体・補償の判断は、このあとに別の手続きで進みます。


罹災証明の調査や耐震診断とは、何が違いますか?

ここが最も混同されやすい部分です。地震のあとに建物をめぐって動く制度は、目的の違う複数のレーンが並行して進みます。順番に一列で進むわけではありません。

制度目的主な実施者時期の目安
応急危険度判定余震などによる二次災害から人命を守る市町が実施の要否を判断し、判定士が活動被災直後の短期間
住家被害認定調査(罹災証明)支援制度に使う被害の程度を認定する市町市町が災害ごとに案内する時期・方法による
地震保険の損害調査契約にもとづく保険金の算定保険会社契約者からの連絡後
耐震診断建物の耐震性能を評価する建築士など有資格者平時・復旧の判断時

広島県自身が、判定は罹災証明の調査とは違うと明記しています。

この判定は,災害救助法による各種施策や税の減免を実施するにあたって必要とされる家屋の被害程度の証明(罹災証明)のための調査とは異なりますので,御注意ください。
(広島県「被災建築物応急危険度判定について」・2026年8月5日確認)

内閣府も、両者の混同に注意を促しています。

これらの調査は、それぞれ異なる目的を有しているものであり、例えば応急危険度判定で「危険」とされた住家が、必ずしも「全壊」又は「半壊」と認定されるとは限りませんので、混同しないよう注意してください。
(内閣府『広報ぼうさい』第78号・2026年8月5日確認)

したがって、罹災証明が必要な場合は、応急危険度判定とは別に、市町が案内する申請・住家被害認定の手続きが必要です。赤・黄・緑の色だけで、申請の要否や認定結果が決まるわけではありません。

耐震診断との違いも重要です。耐震診断は、平時に建物の図面や現況を調べて耐震性能を評価する制度で、応急危険度判定とは目的も手法も別です。診断の流れと費用は耐震診断の流れと費用で説明しています。


判定に来た人が本物かどうかは、何で確認できますか?

災害のあとには、被災地に便乗した訪問業者のトラブルが起きます。判定の仕組みを知っておくこと自体が、この種のトラブルを避ける材料になります。

東京都は、判定に関して次のように注意を呼びかけています(要旨)。判定は区市町村が実施を宣言して行われるもので、判定員は腕章と登録証を携帯している。不審に思ったら登録証の提示を求めて身元を確認してほしい——という内容です(東京都都市整備局・2026年8月5日確認)。広島県でも、制度要綱で「判定士は,応急危険度判定の作業中は,常時,登録証を携帯するものとする」と定められています。

確認したいのは、次の点です。

  • 市町が判定の実施を発表しているか(市の公式サイト・防災無線・広報車など)
  • 登録証の提示を求める。「応急危険度判定士」と書かれた腕章やビブス、ヘルメットの着用も目印になります
  • 費用を請求されないか。判定はボランティアの活動として行われ、住民に費用を請求しません
  • 修理や解体の契約を持ちかけられないか。判定はその場で工事を売る活動ではありません
  • 不審なときは、訪問者が示した番号ではなく、市町の公式の電話番号にかけて照会する

目印だけで判断しないでください
腕章や身分証は重要な確認材料ですが、「腕章をしていれば必ず本物」と言い切ることはできません。判定士は民間の建築士などが担うため、「自治体の職員でないから偽者」でもありません。最終的な確認は、市町が実施を発表しているかどうかと、公式番号への照会です。

地震後にかぎらず、屋根や外壁の「無料点検」を持ちかける訪問への対処は、点検商法「屋根が浮いています」と言われたらで詳しく整理しています。


赤や黄の紙が貼られたあとは、どこへ相談すればよいですか?

以下は原則的な確認先です。実際には、市町への確認、保険会社への連絡、安全確保のための応急措置を並行して進める場合があります。危険な建物へ、写真撮影や家財の搬出のために立ち入らないでください。

  1. 人の安全が最優先。負傷者がいる・倒壊のおそれがあるなど緊急時は119番。判定の色にかかわらず、危ないと感じたら近づかない
  2. 市町の災害対策本部・相談窓口へ。判定結果の意味、避難所、罹災証明の申請方法は市町が案内します。災害時の窓口や受付方法は、広島市・東広島市の公式サイトや防災情報で案内されます
  3. 罹災証明が必要な場合は、市町の案内に従って申請します。被害状況は、安全な場所から撮影できる範囲で記録してください
  4. 加入している保険会社にも早めに連絡し、地震保険を含む契約内容と、調査前の片付け・応急措置・修理について確認してください
  5. 人命や周辺の安全を確保するための応急措置が先に必要な場合があります。恒久的な修理契約は、市町や保険会社への確認、被害の記録、支援制度を整理してから検討してください

応急措置についての注意
屋根にブルーシートをかける作業は、被災した屋根の上での転落事故が起きやすい作業です。ご自身で屋根に登らず、市町が案内する相談窓口や、高所作業に対応できる専門業者をご確認ください。119番は救命・火災などの緊急時に利用してください。


広島県では、誰が判定に来るのですか?

判定を行うのは、県の認定を受けた建築士などの「応急危険度判定士」です。広島県では 2,187名が「広島県地震被災建築物応急危険度判定士」としてボランティア登録しています(令和5年1月31日時点、広島県「被災建築物応急危険度判定-総合窓口-」・2026年8月5日確認)。基準日が示された数字のため、現在の人数はこれと異なる可能性があります。

公的な判定は、市町の災害対策本部が実施の要否を判断し、必要に応じて県などが判定士の参集・派遣や物資を支援します。判定士が個人の判断だけで被災地へ行き、活動するものではありません。

民間の方が広島県で新規に判定士の認定を申請する場合、原則として次の要件を満たす必要があります。ただし、知事が認めた者や、他の都道府県ですでに判定士として認定・登録されている方には例外があります(広島県地震被災建築物応急危険度判定士資格認定制度要綱 第4)。

要件内容
資格建築士法に規定する建築士であること
所在広島県内に在住または在勤する者であること
講習知事が指定する講習、または他の都道府県における同様の講習を修了した者であること

なお、同要綱 第4-3 により、認定の有効期間は設けられていません(令和4年1月17日施行)。

2026年度(令和8年度)の新規登録講習会は、次の日程で開催されます。

項目内容
日時2026年10月26日(月)12:30〜16:10(受付12時〜)
会場広島県情報プラザ 地下2F「多目的ホール」(広島市中区千田町3-7-47)
定員100名(定員になり次第締切)
受講料4,500円(テキスト代含む、税込)
主催広島県、公益社団法人広島県建築士会

出典:令和8年度 被災建築物応急危険度判定士講習会(新規)のご案内(2026年8月5日確認)。この講習は、受講すれば登録される仕組みではありません。リーフレットには「本講習受講後、広島県への認定申請手続きが必要となります」と明記されています。


【ご報告】代表が2026年10月26日の登録講習会に申し込みました

当社代表の綾野が、上記の新規登録講習会に申し込みました。ここまでご説明した制度を、平時から正確に理解しておく必要があると考えたためです。

現在の段階(2026年8月5日時点)
綾野利郎は、2026年10月26日開催の広島県指定の新規登録講習会に 申込みを済ませた段階 です。未受講・未認定・未登録であり、現時点で被災建築物応急危険度判定士ではありません。講習を受けたあと広島県へ認定申請を行い、知事の認定と登録証の交付を受けて初めて登録となります。受講・登録の状況は、この記事を更新してお知らせします。

あわせて、立場の違いをはっきりさせておきます。

被災建築物応急危険度判定は、市町が実施を判断する災害時の公的な応急活動です。当社が提供する有償の調査・修理・見積サービスではありません。判定士の登録は、広島県が当社や当社のサービスを推奨・認証するものではありません。

判定活動は、被災された方の安全のための公的な活動であり、その場で工事の営業をするものではありません。当社は、判定活動と自社の商談を分けて考えています。

なお、令和8年熊本地震の判定活動は被災直後に行われるため、10月の講習が間に合うものではありません。今回の申込みは、次に備えるためのものです。


まとめ

  • 赤・黄・緑は、余震などによる二次災害を防ぐための応急的な情報です
  • 色は、全壊・半壊の認定や、保険金額、耐震性能を示すものではありません
  • 実際の災害時は、ステッカーの注記と市町の公式発表を優先してください

よくある質問

Q. 赤い紙が貼られた家には、もう住めないのですか?
A. 「危険」は、判定時点で立ち入ると危険という意味であり、取り壊しの決定でも、全壊の認定でもありません。赤だけで最終的な扱いは判断できず、復旧の可否には別途、建築士などによる詳細な調査が必要です。まずは自分の判断で立ち入らず、市町の窓口にご相談ください。

Q. 判定の費用は誰が払うのですか?
A. 市町が実施する公的な判定では、判定士はボランティアとして活動し、住民に費用を請求することはありません。費用を請求されたり、その場で修理契約を求められたりした場合は、市町の公式番号へ照会してください。

Q. 緑の紙が貼られたので、耐震性は大丈夫ということですか?
A. いいえ。「調査済(緑)」は、判定した時点の応急的な調査で、使用可能という意味です。建物の耐震性能を評価したものではありません。耐震性を知りたい場合は、平時に耐震診断を受ける必要があります。

Q. ステッカーが貼られていない建物は安全ですか?
A. ステッカーがないことは、安全の確認が済んだことを意味しません。判定が未実施の可能性もあります。建物に傾き・大きな亀裂・部材の落下などが見られる場合は近づかず、市町の公式情報をご確認ください。

Q. 応急危険度判定を受ければ、罹災証明はもらえますか?
A. 応急危険度判定を受けただけでは交付されません。罹災証明が必要な場合は、市町が案内する申請と住家被害認定の手続きが別に必要です。内閣府も、応急危険度判定で「危険」とされた住家が必ずしも「全壊」「半壊」と認定されるとは限らないとして、混同しないよう注意を促しています。

Q. 自宅を判定してほしいのですが、どこに申し込めますか?
A. 平時に予約する点検サービスではありません。発災後の対象地域や個別の受付方法は災害ごとに異なるため、市町の公式発表をご確認ください。なお当社では、公的な応急危険度判定の依頼を受け付けていません。

Q. 広島県で判定士になるには、どうすればよいですか?
A. 民間の方が新規に認定を申請する場合、原則として①建築士法に規定する建築士であること、②広島県内に在住または在勤すること、③知事が指定する講習(または他都道府県の同様の講習)を修了していること——を満たしたうえで、県への認定申請が必要です(知事が認めた者や他都道府県で登録済みの方には例外があります)。2026年度の新規登録講習会は2026年10月26日に開催されます。詳細は広島県建築士会へお問い合わせください。


出典(2026年8月5日時点で確認)

本記事は一般的な情報の整理です。実際の災害時の対応は、お住まいの市町の公式発表が優先されます。個別の建物についての判断は、所管行政庁または有資格者にご相談ください。

著者・運営者情報

綾野 利郎(合同会社インハート 代表) 二級建築士・二級施工管理技士。広島市・東広島市で、旧耐震木造住宅の瓦→板金屋根への葺き替えによる耐震改修と、住宅用太陽光発電を手がける。診断から施工管理まで有資格者が一貫して担当し、「売り込まない専門家」として住まいの相談に対応している。

### 住まいのご相談について
広島市・東広島市で、平時の工事内容や見積についてのご相談を承っています。売り込みはいたしません。相談後にご依頼を断っていただいても構いません。
なお、災害時の応急危険度判定は市町が実施する公的な活動のため、当社ではお受けできません。判定に関するお問い合わせは、お住まいの市町の窓口へお願いします。また、当社の現地確認は、耐震診断資格者が行う制度上の耐震診断とは異なります(耐震診断の資格は2027年2月以降取得予定です)。


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この記事を書いた人

合同会社インハート 代表。二級建築士・二級施工管理技士。広島市・東広島市で、旧耐震木造住宅の屋根葺き替えによる耐震改修と、住宅用太陽光発電を手がける。診断から施工管理まで有資格者が一貫して担当し、「売り込まない専門家」として住まいの相談に対応している。

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