広島の活断層「30年確率 不明」とは?令和8年熊本地震から考える木造住宅の備え【広島市・東広島市】

木のテーブルに広げた色分けの地図を指しながら、建築士と住まい手が話し合っている様子。木造住宅の模型と図面、メジャー、鉛筆が並ぶ。広島市・東広島市の活断層と木造住宅の耐震の備えのイメージ

※この記事は、合同会社インハート 代表(二級建築士・二級施工管理技士)が解説しています。地震の被害状況は 2026年8月2日時点で公表されている速報値にもとづき、今後更新されます。活断層の評価や補助制度の内容は、必ず各公式ページで最新をご確認ください。

2026年7月28日に熊本県で発生した地震では、36名の方が亡くなり(2026年8月1日時点の集計)、いまも多くの方が避難生活を続けておられます。被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。

✅ この記事の結論(先にお伝えします)

  • 広島市域から山口県東部にかけて延びる岩国-五日市断層帯のうち、己斐断層区間・五日市断層区間は、30年以内の地震発生確率が「不明」と評価されています(地震調査研究推進本部、平成28年の一部改訂)。
  • 「不明」は「起きない」でも「低い」でもありません。評価に必要なデータが十分に得られておらず、確率という形で算定できないという意味です。
  • 活断層の30年確率だけで、個別の住宅の耐震性や改修の要否を決めることはできません。地域の揺れやすさと、建築時期・現況・増改築歴といった建物側の情報を、合わせて確認します。
  • 広島市は「揺れやすさマップ」(250mメッシュ)と小学校区別の「防災カルテ」東広島市は約500m角ごとの「地震防災マップ」を公開しています。どちらも無料で確認できます。
  • 建物側でまず見るのは 建築確認を受けた時期です。1981年(昭和56年)6月1日より前なら旧耐震基準、2000年(平成12年)6月1日より前の木造なら接合部などの規定が明確化される前の建物にあたります。
  • 報道では古い外観の木造住宅や瓦屋根のお住まいが多く映りますが、映像だけで倒壊の原因や建築時期を判断することはできません。一方で一般論として、重い屋根に見合う壁の量と配置があるか瓦が下地に緊結されているかは、古い木造住宅で確認したい項目です。個別の被害の原因は、建物全体の調査を待つ必要があります。
  • 令和8年熊本地震について、地震調査委員会は 「割れ残っている部分があり、将来的にそれらの地域で大きな地震が起きる可能性は十分ありうる」 と評価する一方、2016年の熊本地震との直接的な関連は「現時点で不明」という立場です。「次が近い」とまでは言われていません。

この記事は、被災地向けの情報ではありません。広島にお住まいの方が、大きな地震の報道のあとに気にされる点を整理したものです。とくに次の2つは、耐震のご相談の入口として繰り返しいただきます。

「広島にも活断層があると聞いたけれど、調べたら確率が『不明』と書いてある。これはどう受け取ればいいのか」
「うちは新耐震だから大丈夫、と言われてきたが、本当にそうなのか」

どちらも、前提を整理しないと誤解が生じやすい質問です。順に見ていきます。数字は一次資料から引き、確認日を添えました。

目次

令和8年熊本地震では、いま何が分かっていますか?

まず事実関係を、公表されている範囲で整理します。

項目内容
発生2026年7月28日 16時27分頃
震源・深さ熊本県熊本地方・深さ約16km
規模マグニチュード7.1(気象庁マグニチュード)
最大震度震度7(宇城市豊野町、八代郡氷川町島地)
地震のタイプ横ずれ断層型の地殻内の地震(いわゆる直下型)
動いたとされる断層布田川・日奈久断層帯の一部

出典:気象庁「令和8年熊本地震 ポータルサイト」(2026年8月2日確認)。「令和8年熊本地震」は気象庁が定めた名称です。

住まいの被害は、いまも集計が進んでいます。総務省消防庁は被害報を継続して更新しており、2026年8月2日時点で第29報まで公表されています。発災3日後には全県の住家被害の集計がほとんど成立していませんでしたが、その数日後には全壊が180棟を超える規模まで積み上がりました。

発災直後の被害数を、この記事の主題にしていない理由
住家被害の集計は、市町村の現地調査が進むにつれて大きく増えるのが通例です。今日の数字を根拠に何かを判断すると、数日で前提が変わります。最新の状況は総務省消防庁の災害情報熊本県「令和8年熊本地震に関する情報」国土交通省の被害状況まとめでご確認ください。この記事では、時間が経っても変わらない部分だけを扱います。

「割れ残り」があると、次の大地震が近いということですか?

報道で「割れ残り」という言葉を目にされた方も多いと思います。ここは観測された事実研究者の解釈を分けて読む必要があります。

地震調査委員会(政府の評価機関)が2026年7月29日に示した評価は、今回の地震活動の分布が日奈久断層帯の一部に沿っていること、そして「割れ残っている部分があり、将来的にそれらの地域で大きな地震が起きる可能性は十分ありうる」というものです。

一方で同委員会は、2016年の熊本地震との直接的な関連については「現時点で不明」という立場を取っています。産業技術総合研究所は「2016年の地震でひずみが増加した領域で今回の地震が発生した」ことを確認しており、京都大学防災研究所の西村卓也教授は「2016年で割れ残った部分が今回割れた可能性」を指摘していますが、これらは解析結果と専門家の見解であり、公式評価はまだ判断を留保しています。

ここから先は、誰にも言えません
「割れ残りがあるから次が近い」「2016年の地震が今回を引き起こした」は、現時点の公式評価が言っていないことです。地震の発生時期を絞り込む技術は確立されていません。私たち建築の側が使えるのは、「いつ来るか分からないが、来たときに建物がどう応答するか」という一点だけです。この記事も、そこから先には踏み込みません。

広島の活断層「30年確率 不明」は、何を意味しますか?

ここが本題です。広島県大竹市から山口県周南市、広島県廿日市市を経て広島市安佐北区に至る岩国-五日市断層帯について、地震調査研究推進本部は3つの区間に分けて評価しています(平成28年の一部改訂)。

区間位置(原文)長さ想定される規模30年以内の発生確率
己斐断層区間広島市安佐南区から同市西区その沖合に至る約23kmM7.1程度不明
五日市断層区間広島市安佐北区から同市佐伯区を経て広島県廿日市市に至る約27kmM7.2程度不明
岩国断層区間広島県大竹市から山口県周南市に至る約46kmM7.6程度0.03%〜2%

出典:地震調査研究推進本部「岩国-五日市断層帯」(2026年8月2日確認)。同本部は、各区間はそれぞれ別々に活動すると推定されるものの、複数区間が同時に活動する可能性も否定できず、その場合はM7.9〜8.0程度の地震が発生する可能性もあるとしています。

「不明」とされている理由も、原文にはっきり書かれています。

  • 己斐断層区間:「過去の詳しい活動時期及び平均的な活動間隔に関するデータが得られていないため」
  • 五日市断層区間:「平均的な活動間隔及び平均的なずれの速度に関するデータが得られていないため」

活断層の長期確率は、過去の活動時期や平均的な活動間隔などをもとに、今後一定期間に地震が発生する可能性を評価したものです。この2区間では、その評価に必要なデータが十分に得られていないため、30年確率を算定できません。「不明」はその状態を正直に書いたものです。

「不明」が意味すること・意味しないこと

「不明」が意味すること「不明」が意味しないこと
確率を算定するためのデータが不足している❌ 地震が起きない
断層の存在と、想定される規模(M7.1〜7.2程度)は評価されている❌ 確率が低い
数字での比較・順位づけができない❌ 確率が高い・切迫している
建物側の情報と合わせて判断する必要がある❌ 調べても意味がない

表の右側を言い切れる人はいません。「不明だから安心」も「不明だから実は危ない」も、どちらも資料が支持していない読み方です。

確率だけで、自宅の備えは決められますか?

決められません。広島県内・周辺の主な想定地震を並べると、確率の桁はかなりばらついています。

想定される地震規模の目安30年以内の発生確率
岩国断層区間M7.6程度0.03%〜2%
己斐断層区間・五日市断層区間M7.1〜7.2程度不明
安芸灘断層帯M7.2程度0.1%〜10%
広島湾-岩国沖断層帯M7.5程度不明
南海トラフ地震M8〜9クラス

出典:地震調査研究推進本部「広島県の地震活動の特徴」(2026年8月2日確認)

活断層の確率だけでは、住宅の判断ができない理由
活断層の「30年確率」は、その断層が動く可能性を示す指標です。自宅がどのくらい揺れるかとは別物で、揺れの大きさは震源からの距離と地盤の条件で変わります。さらに、広島県では活断層以外の地震でも被害が生じています。たとえば2001年の芸予地震は安芸灘付近のフィリピン海プレート内部で発生し、県内で死者1名・負傷者193名・家屋全壊65棟の被害が出ました。近くの活断層の確率が低い(あるいは不明)だから安全、という組み立てが成り立たないのは、このためです。

判断に使えるのは、自宅がどのくらい揺れうるか(地域の情報)と、その揺れに自宅がどう応答するか(建物の情報)の2つです。順に確認方法を書きます。

広島市・東広島市では、どの資料で揺れやすさを確認できますか?

どちらの市も、無料で公開している資料があります。まずここからで十分です。

広島市:広島市地震防災マップ

  • 揺れやすさマップ — 想定地震の規模・震源からの距離・地盤条件をもとに、250mメッシュごとの震度分布を示したもの。
  • 防災カルテ小学校区別に、建物被害などの危険度をレーダーチャートで相対的に表したもの。
  • 対象は6つの想定地震(南海トラフ巨大地震/安芸灘〜伊予灘〜豊後水道の地震/五日市断層による地震/己斐-広島西縁断層帯による地震/岩国断層帯による地震/広島湾-岩国沖断層帯による地震)。平成25年度の広島市地震被害想定調査にもとづきます。

東広島市:東広島市ハザードマップ・地震防災マップ

  • 広島県の地震被害想定調査で想定された地震のうち発生確率が高いものについて、約500m角ごとのおおよその震度を目安として示しています。

想定地震の名称が資料によって違う点にご注意ください
広島市の防災マップに並ぶ「五日市断層による地震」「己斐-広島西縁断層帯による地震」といった名称は、平成25年度の広島市地震被害想定調査で用いられた想定地震名です。前の章で扱った、平成28年に一部改訂された岩国-五日市断層帯の3区間区分(己斐断層区間・五日市断層区間・岩国断層区間)とは、名称も区分の切り方も異なります。同じ断層を指していても資料によって呼び方が変わるため、比べるときは出典と評価年をそろえてください。

揺れやすさマップは「予報」ではありません
これらは想定地震を仮定したときの計算結果で、実際の地震で必ずこの震度になるという意味ではありません。使い方としては、「自宅の周辺が、市内の他の地域と比べて揺れやすい側か・そうでないか」という相対的な位置づけを知るのが目的です。同じ小学校区でも、盛土・埋立・旧河道などの条件で変わります。

新耐震の木造住宅なら、確認しなくても大丈夫ですか?

「新耐震だから大丈夫」は、残念ながらそのままでは成り立ちません。ここは2016年の熊本地震で、はっきりデータが出ています。

国土交通省の「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書(平成28年9月30日)によれば、益城町中心部の調査対象地域では、1981年5月以前に建築された木造住宅の倒壊・崩壊率が28.2%、2000年6月以降に建築された木造住宅では2.2%でした。さらに、1981年6月〜2000年5月の「新耐震だが2000年より前」の木造住宅にも倒壊被害が見られたことが、2000年改正(基礎・壁配置バランス・接合部の規定の明確化)の意義を再確認させました。

この数字の使い方について
28.2%・2.2%は、益城町中心部の調査対象地域における結果です。全国のどの住宅にもそのまま当てはまる倒壊確率ではありません。読み取るべきは絶対値ではなく、建築時期によって被害の出方がはっきり分かれたという傾向のほうです。

木造住宅は、建築確認を受けた時期で3つに分かれます。

区分建築確認を受けた時期押さえておきたい点
旧耐震基準1981年5月31日以前国土交通省は「耐震性が不十分なものが多く存在」としています。診断・改修の補助制度の主な対象もここ。
新耐震(2000年より前)1981年6月1日〜2000年5月31日壁量の考え方は現行に近い一方、接合部・壁配置バランス・基礎の規定が明確化される前。熊本地震で倒壊例が確認された層。
2000年基準以降2000年6月1日以降相対的に被害は少ない傾向。ただし無被害を保証するものではありません

確認の起点になるのは建築確認を受けた時期で、竣工日でも購入日でもありません。まず確認済証・検査済証を探してください。課税明細や登記簿の建築年は手がかりにはなりますが、それだけで旧・新の別を確定することはできません。境界の時期にあたるお住まいでは、行政の台帳や有資格者による確認が必要になります。

もう一点、今回の熊本の地震では、2016年の地震で変形が蓄積していた建物が今回さらに被害を受けた例があるとの現地所見が報じられています。ただし、体系的な原因分析はまだ公表されていません。過去の地震や経年劣化、改修の履歴が今回の被害にどう影響したかは、今後の調査を待つ必要があります。それでも「一度大きく揺れた建物は、見た目が戻っていても同じ状態とは限らない」という視点は、広島でも共有しておく価値があります。

自宅がどの区分に当たるか分かった段階で、次は木造住宅の耐震診断の流れと費用をご覧ください。診断の結果で改修に進む場合の工法と費用は耐震改修の費用と工法にまとめています。

ニュースでは古い瓦屋根の家が多く映ります。瓦屋根と被害に関係はありますか?

報道の映像では、古い外観の木造住宅や瓦屋根のお住まいが繰り返し映り、被害が目立つように感じます。私自身、そう受け取りました。ただし、これは映像を見た私の印象であって、調査結果ではありません。

先に、映像からは言えないことを書きます。

映像からは、倒壊の原因も建築時期も判定できません
– 令和8年熊本地震について、屋根材と被害の関係を分析した調査結果は公表されていません。体系的な原因分析はこれからです(2016年の際、国土交通省の原因分析委員会の報告書がまとまったのは発災から約5か月後でした)。
– 報道は倒壊した建物を映すため、映像は被害の大きい側に偏ります。
「旧耐震かどうか」は外観からは判定できません。基準は建築確認を受けた時期であって、見た目の古さではありません。
– 被災地域の住宅全体に占める瓦屋根の割合が示されていないため、映像に映った瓦屋根の多さを被害率と比べることもできません。

そのうえで、古い木造住宅に重い瓦屋根が載っている場合に、なぜ耐震上の確認項目が増えるのかは、公表資料と力学から説明できます。ここには別々の2つの問題があります。前提として、建物全体の倒壊と、屋根瓦の脱落は別の現象です。

①建物全体の問題:屋根の重さに、壁の量が見合っているか

地震のとき、建物の各部分には重さに応じた力(慣性力)が生じます。実際の大きさは建物の固さや揺れ方によっても変わりますが、同じような揺れを受けるなら、重いほど建物が負担する力は大きくなる方向に働きます。屋根は建物の上部にある重量で、その力を下の階の壁や柱が負担するため、屋根の軽量化は地震時の負担を減らす手段のひとつになります。

屋根材重量の目安屋根面積100㎡なら
和瓦(粘土瓦)約50〜60kg/㎡約5.0〜6.0トン
化粧スレート約20kg/㎡約2.0トン
ガルバリウム鋼板などの金属屋根約5〜7kg/㎡約0.5〜0.7トン

※2026年8月時点の一般的な目安で、公的に定められた標準値ではありません。製品と葺き方(葺き土の有無など)で変わります。表の「100㎡」は屋根面積で、延床面積ではありません。

表の目安で単純に換算すると、瓦と金属屋根では屋根材の部分で約4.3〜5.5トンの差になります。ただし実際にどれだけ軽くなるかは、既存の葺き方、葺き土や下地の有無、新しく設ける屋根下地などで変わるため、個別に算定します。

問題は、古い木造住宅では、その重さに見合う壁の量と配置が確保されていない場合があることです。重い屋根そのものより、重さと壁量の釣り合いが論点だとお考えください。詳しくは瓦屋根は重いと耐震に不利?屋根の軽量化は耐震に効くかにまとめています。

②建物倒壊とは別の問題:瓦が下地に留め付けられているか

もう一つは、建物が倒れなくても瓦が落ちるという問題です。国土交通省 国土技術政策総合研究所は、「屋根瓦を落とさない・飛ばさないための7つのQ&A」で、2016年の熊本地震で和瓦の棟(屋根の頂部)などを中心に瓦の脱落被害が数多く見られた主な要因を、「瓦を下地に留め付けていない旧来の工法により施工したためです」と説明しています。

瓦の留め付けについては、2001年に技術的な設計・施工ガイドラインが示され、その後2022年に告示上の緊結基準が強化されました。性格の異なる2つです。

時期内容
2001年〜「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」が公表。耐震・耐風を考慮してボルト・金具で下地に緊結する方法を示した技術指針で、すべての施工で採用が義務づけられたものではありません。国総研は、この工法による瓦屋根では脱落やズレが生じにくいとしています。
2022年(令和4年)1月1日〜告示基準(昭和46年建設省告示第109号)の改正が施行。新築等では軒・けらば・むね・平部の「すべての瓦」の緊結を求める基準へ強化。主な契機は2019年の房総半島台風による強風被害です(広島県の周知ページ)。

この表は「現在の留め付けルール」を示す情報です
2022年の告示改正は、主に強風被害を踏まえたものです。今回の地震における建物倒壊の原因や、その防止効果を示す資料ではありません。

2001年より前に葺かれ、その後改修されていない瓦屋根では、旧来の留め付け方法が残っている可能性があります。ただし、施工年代だけで緊結の状況は判断できません。2001年以前でも適切に緊結された屋根はありますし、2001年以降でもガイドラインどおりとは限りません。実際の留め方は、施工記録や現地調査で確認する必要があります。

いずれにせよ、瓦屋根そのものが悪いわけではありません。国総研も、瓦屋根は「適切な設計・施工法により、耐震性・耐風性も確保される屋根」だとしています。

私が屋根の軽量化を扱っている理由

インハートでは創業時から、旧耐震木造住宅の耐震改修において、屋根の軽量化を選択肢のひとつとして扱ってきました。瓦屋根だけが被害の原因だと考えているからではなく、建物全体を診断するなかで、屋根の重量も確認すべき要素のひとつだからです。屋根が実際に葺き替えの時期を迎えている場合には、維持修繕とあわせて軽量化を検討できることがあります。ただし、葺き替えの必要性と耐震改修の内容は別々に判断し、建物全体の診断結果を踏まえて決めます。

今回の熊本地震は、当社の工法の効果を証明するものではありません。屋根を軽くすることで補強計画が変わる場合はありますが、どの補強が必要になるかは建物全体を診断しなければ判断できません。屋根の軽量化は、診断の結果として選ぶ手段のひとつであって、診断の代わりにはなりません。この順番だけは、逆にしないでください。工法と費用の全体像は耐震改修の費用と工法にまとめています。

自宅の耐震性は、何から確認すればよいですか?

順番があります。上から順に、費用のかからないものから並べました。

  1. 建築確認を受けた時期を調べる — まず手元の確認済証・検査済証を確認します。1981年6月1日2000年6月1日が分かれ目です。※行政の台帳の閲覧や、登記事項証明書などの取得には費用がかかる場合があります。
  2. 図面と増改築の履歴を集める — 新築時の図面が残っていると、診断の調査項目が減り、費用も抑えやすくなります。壁を抜いた・間取りを変えた・増築した履歴は特に重要です。
  3. 市の地震防災マップで、自宅周辺の揺れやすさを見る(無料)— 上記の広島市・東広島市の資料です。
  4. 耐震診断を受ける — ここで費用が発生します。広島市・東広島市とも補助の枠組みがあり、広島市の耐震改修補助金東広島市の耐震改修補助金にそれぞれまとめています。

補助制度は「年度ごとの受付」です(2026年8月時点)
広島市の住宅耐震改修等の補助(令和8年度は工事費の80%・上限115万円/戸)は申込受付が4月15日〜28日で終了、東広島市の木造住宅耐震診断(自己負担1万円)も受付が4月1日〜6月30日で終了しています。次年度に同じ制度が実施されるかは現時点では未定ですが、確認済証や図面の有無を先に確かめておくと、募集があったときに動きやすくなります。制度の内容は年度ごとに変わりますので、最新は各市の公式ページでご確認ください。

ご相談で多い2つのパターン

パターン1:「新耐震だから対象外だと思っていた」
築30年前後のお住まいで、「1981年より後だから新耐震、だから診断は不要」と理解されているケースです。実際には1981年6月〜2000年5月の木造は、接合部や壁配置の規定が明確化される前の建物にあたります。熊本地震で倒壊例が確認されたのもこの層でした。補助の主な対象は旧耐震ですが、診断を受けて現況を把握しておく価値は十分にあります

パターン2:「確率が低いと書いてあったので、後回しにしていた」
ハザード情報を調べたうえで「広島は確率が低い」と判断され、数年見送られていたケースです。確率が示されているのは岩国断層区間(0.03%〜2%)などで、己斐・五日市の2区間は「不明」です。低いのではなく、算定に必要なデータが得られていない。この違いに気づかれた時点で、判断材料を建物側にも広げることをおすすめしています。

※上記は、複数のご相談で繰り返し見られる状況をもとに再構成した典型パターンであり、特定のお客様の事例ではありません。実際の判断は現地調査によって異なります。

耐震診断のメリット・注意点

内容
メリット建物全体の状態が上部構造評点という数値で分かる / 弱点になりうる箇所・方向を把握できる / 改修の必要性を検討する根拠が得られる / 補助制度の入口になる / 「当面は大きな工事をしない」という判断にも根拠が残る
注意点費用と時間がかかる(図面がないと調査項目が増えます) / 診断結果が悪くても改修費用まで自動的に手当てされるわけではありません / 診断は現時点の評価であり、将来の無被害を保証するものではありません / 補助を使う場合は年度の受付期間に縛られます

「診断を受けたら改修しなければならない」わけではありません。評点を把握したうえで、全体のバランスを確認した補強計画のもと、段階的に工事を進める場合もあります。

耐震のご相談・現地確認を承っています

広島市・東広島市で、耐震に関するご相談・現地確認・セカンドオピニオンを承っています。「築年数から見て診断を受けるべきか知りたい」「他社の提案が妥当か見てほしい」というご相談だけでも構いません。売り込みはいたしません。相談のあとに依頼をされない選択も、もちろん自由です。
📞 050-1725-9907(平日9-18時 / 土9-17時 / 日祝休)
💬 LINE(友だち追加)/ お問い合わせフォーム
※現地での事前確認は、自治体の補助制度上の耐震診断とは別のものです。耐震診断の資格は2027年2月以降取得予定で、ご相談案件は有資格者が一貫して担当します。

地震のあとに「無料で点検します」と訪問があったら?

大きな地震のあとには、被災地から離れた地域でも住宅修理を持ちかける訪問が増えます。国民生活センターは今回も発災直後から注意を呼びかけており、「ご用心 災害に便乗した悪質商法」では、次のような手口が挙げられています。

  • 「屋根を無料で点検します」と突然訪問し、不安をあおって高額な工事契約を迫る
  • 見積を依頼しただけなのに、勝手にブルーシートを張って高額な作業料を請求する
  • 悪質な業者は被災地だけでなく広い地域を対象にする可能性があり、被災地以外でも注意が必要

熊本県も「災害に便乗した悪質商法にご注意ください!」として注意喚起を出しています。困ったときの相談先は消費者ホットライン188、不審な訪問や電話は警察相談専用電話#9110です。訪問販売に該当する場合は、原則としてクーリング・オフの対象になります(適用の可否は188へご確認ください)。

対処の手順は「屋根が浮いていますよ」と訪問業者に言われたらに詳しくまとめました。その場で契約しない突然来た業者を屋根に上げない。この2つで、トラブルのリスクを下げられます。

地震のあとに建物へ貼られる赤・黄・緑のステッカー(被災建築物応急危険度判定)の意味と、判定に来た人が本物かどうかの確認方法は、地震のあと、家に貼られる赤・黄・緑の紙は何?被災建築物応急危険度判定の見方【広島市・東広島市】で整理しています。

よくある質問

Q. 「30年確率が不明」というのは、確率がゼロに近いという意味ですか?
A. 違います。「不明」は、確率を算定するためのデータ(過去の活動時期や平均的な活動間隔など)が十分に得られていないという意味です。地震調査研究推進本部の原文でも、己斐断層区間は「過去の詳しい活動時期及び平均的な活動間隔に関するデータが得られていないため」確率を求められないと明記されています。断層の存在と想定規模(M7.1〜7.2程度)は評価されていますので、「確率がない=リスクがない」ではありません。

Q. 広島市のどのあたりが揺れやすいのか、自分で調べられますか?
A. はい。広島市地震防災マップの「揺れやすさマップ」で、250mメッシュごとの想定震度が公開されています。小学校区別の「防災カルテ」では、地域の危険度が相対的に示されています。東広島市は地震防災マップで約500m角ごとの震度の目安が確認できます。いずれも無料です。ただし想定地震を仮定した計算結果ですので、実際の地震で必ずこの震度になるという意味ではありません。

Q. 熊本の地震を受けて、広島でも耐震診断の申し込みは急いだほうがよいですか?
A. 制度の面では、広島市・東広島市とも令和8年度の受付はすでに終了しています(2026年8月時点)。ですので「急いで申し込む」という選択肢自体が今はありません。次年度に向けて意味があるのは、確認済証や図面が手元にあるかを確かめておくといった準備です。書類がすぐに見つからないお住まいも多く、募集が始まってから探し始めると慌てることになります。

Q. ニュースで倒れているのは瓦屋根の家が多く見えます。瓦は危ないのですか?
A. 映像だけで「瓦だから倒れた」と判断することはできません。令和8年熊本地震について、屋根材と被害の関係を分析した調査結果は公表されておらず、被災地域の住宅に占める瓦屋根の割合も示されていないため、映像に映った多さを被害率と比べることもできません。一方で一般論として、同じような揺れを受けるなら屋根が重いほど建物が負担する力は大きくなる方向に働くこと(和瓦は約50〜60kg/㎡、金属屋根は約5〜7kg/㎡が目安)、旧来工法の瓦屋根にはすべての瓦を下地へ緊結していないものがあり、2016年の熊本地震で瓦の脱落の要因として指摘されたことは、公表資料で示されています。論点は「瓦か否か」ではなく、屋根の重さに壁の量が見合っているかと、瓦が実際にどう留められているかです。

Q. 2016年の熊本地震のあとに耐震改修した建物は、今回どうだったのですか?
A. 現時点で、それを示す公表データはありません。被害の集計自体が進行中で、改修履歴と被害の関係を分析した報告が出るのはこれからです。2016年の際も、国土交通省の原因分析委員会の報告書がまとまったのは発災から約5か月後(平成28年9月30日)でした。分かっていないことは、分かっていないとお伝えします。

Q. 応急危険度判定の「危険(赤)」は、その家がもう住めないという意味ですか?
A. 「危険(赤)」は、当面その建物へ立ち入ることが危険であることを示します。表示や自治体の案内に従い、立ち入らないでください。一方で応急危険度判定は、余震による二次災害から人命を守るために発災直後に行う応急的な判定であり、解体・復旧の要否や恒久的な使用可否を決めるものではありません。罹災証明のための被害認定調査(支援制度に使う損害割合の調査)とも、耐震診断とも、目的も基準も別の制度です。

Q. 広島で耐震診断をしてくれる会社は、どう選べばよいですか?
A. 資格の範囲と、診断から工事までの担当者がどうつながるかを確認するのが基本です。診断だけを外注し、工事は別会社という体制もあれば、一貫して担当する体制もあります。見分け方は耐震改修の業者選びで失敗しないためににチェックリストとしてまとめました。なお、広島市には耐震診断を行う事業者の登録名簿があり、市の窓口で案内を受けられます。

まとめ

広島の活断層情報を読むときに、押さえておきたいのは次の点です。

  1. 己斐断層区間・五日市断層区間の「30年確率 不明」は、安全の意味ではありません。算定に必要なデータが十分に得られていない、という意味です。
  2. 活断層の30年確率だけで、個別の住宅の耐震性や改修の要否は決められません。地域の揺れやすさ(市の防災マップ)と、建築時期・現況・増改築歴(建物の情報)を合わせて確認します。
  3. 建物側の分かれ目は、1981年6月1日と2000年6月1日です。「新耐震だから大丈夫」は、2000年より前の木造には当てはまりません。
  4. 古い木造で重い瓦屋根の場合、屋根の重さに見合う壁の量と配置、そして瓦の緊結状況が確認項目になります。ただし、瓦屋根だけで耐震性や今回の被害の原因を判断することはできません。屋根の軽量化は、建物全体の診断結果を踏まえて選ぶ手段のひとつです。
  5. 地震のあとの「無料点検」は、被災地から離れた地域にも来ます。その場で契約しない、突然来た業者を屋根に上げない。

熊本の地震について、私自身は現地を直接見たわけではありません。この記事で書いたのは、公表された一次資料から確実に言えることと、広島の建物にそのまま持ち帰れる部分だけです。なお私は、2026年10月に広島県の被災建築物応急危険度判定士の登録講習を受ける予定で、現時点では判定士ではありません。この点も正確にお伝えしておきます。

広島市・東広島市で、耐震のご相談・現地確認・セカンドオピニオンを承っています。「うちは診断を受けたほうがいいのか」という入口のご相談で構いません。売り込みはいたしませんので、判断材料を増やす目的でお使いください。住まい全体のご相談は住まいの総合相談窓口からどうぞ。

出典(2026年8月2日時点で確認)

被害状況の数値は2026年8月2日時点で公表されている速報値であり、今後更新されます。活断層の長期評価は現在の科学的知見にもとづくものであり、地震の発生時期を予測するものではありません。本記事は一般的な情報提供であり、個別の建物の耐震性の判断は、現地調査のうえ有資格者にご相談ください。補助制度の適用可否は各市の所管課、建築確認に関する個別判断は所管行政庁の領域です。

著者・運営者情報

綾野 利郎(合同会社インハート 代表) 二級建築士・二級施工管理技士。広島市・東広島市で、旧耐震木造住宅の瓦→板金屋根への葺き替えによる耐震改修と、住宅用太陽光発電を手がける。診断から施工管理まで有資格者が一貫して担当し、「売り込まない専門家」として住まいの相談に対応している。


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この記事を書いた人

合同会社インハート 代表。二級建築士・二級施工管理技士。広島市・東広島市で、旧耐震木造住宅の屋根葺き替えによる耐震改修と、住宅用太陽光発電を手がける。診断から施工管理まで有資格者が一貫して担当し、「売り込まない専門家」として住まいの相談に対応している。

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