※この記事は、合同会社インハート 代表(二級建築士・二級施工管理技士)が解説しています。税制の数値は 2026年6月時点 のものです。税額の最終的な判断は税理士・税務署に、最新の制度は必ず公式ページでご確認ください。
「相続した実家を売ろうと思うけれど、税金はどれくらいかかるのだろう」——広島でも、こうしたご相談をいただくことが増えてきました。
実は、相続した空き家を売って一定の条件を満たすと、売却益から最高3,000万円を差し引ける特例があります。うまく使えば税金が大きく変わる一方、期限や工事の条件があり、知らずに売ってしまうと使えなくなることもあります。
この記事では、広島で旧耐震住宅の耐震改修・屋根葺き替えを手がける二級建築士の立場から、「3,000万円特別控除」の条件と、旧耐震の空き家ならではの注意点を、国の公式情報に沿って整理します。税額そのものの判断は税理士の領域ですが、「直して売るか・壊して売るか」という建物側の判断は、私たちがお手伝いできる部分です。
✅ この記事の結論(先にお伝えします)
- 相続した空き家を売って条件を満たすと、譲渡所得(売却益)から 最高3,000万円 を控除できます(被相続人の居住用財産=空き家を売ったときの特例)。
- 対象は 昭和56年(1981年)5月31日以前に建てられた一戸建て で、相続の直前に被相続人がひとりで住んでいた家(マンションなど区分所有は対象外)。
- 売るときは ①耐震改修して耐震基準を満たす / ②取り壊して更地にする のどちらかが必要。2024年からは買主が引き渡し後(翌年2月15日まで)に工事してもOK になりました。
- 期限は 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで に売ること、かつ 売却代金1億円以下。制度の適用期限は 2027年(令和9年)12月31日の譲渡まで。
- 必要書類「被相続人居住用家屋等確認書」は市区町村の窓口(広島市は区役所建築課)で交付されます。
- 税額の最終判断は税理士・税務署へ。旧耐震の「直して売る/壊して売る」の判断は建築の専門家にもご相談を。(2026年6月時点)
相続した空き家を売ると、税金はどうかかるの?
家や土地を売って利益が出ると、その利益(譲渡所得)に税金がかかります。計算の考え方はシンプルで、次のとおりです。
譲渡所得 = 売却価額 −(取得費 + 譲渡費用)
- 取得費:その家・土地を買ったときの代金など。
- 譲渡費用:仲介手数料、解体費用など、売るためにかかった費用。
相続した古い実家では、買ったときの金額(取得費)がわからないことがよくあります。その場合は「売却価額の5%」を概算の取得費として計算できます。つまり古い家ほど取得費が小さく見積もられ、売却益(=課税対象)が大きく出やすいのです。
ここに効いてくるのが、今回のテーマである 3,000万円の特別控除 です。
税率の目安(長期譲渡所得)
相続した不動産は、亡くなった方(被相続人)が持っていた期間を引き継いで判定します。所有期間が5年を超える「長期譲渡所得」であれば、税率は 約20.315%(所得税15%+復興特別所得税2.1%+住民税5%)です。売却益に対してこの税率がかかるため、控除で売却益を圧縮できる効果は小さくありません。
「3,000万円特別控除」とは?(空き家を売ったときの特例)
正式には「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」といいます。相続した空き家(またはその敷地)を売って一定の条件を満たすと、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる制度です。
- 控除額は 最高3,000万円。ただし 2024年(令和6年)1月1日以後の譲渡で、その空き家を相続した人が3人以上いる場合は、1人あたり最高2,000万円 に変わりました。
- 制度の適用期間は 平成28年4月1日から令和9年(2027年)12月31日まで の譲渡。当初は2023年末まででしたが、4年延長されています。
つまり、「いつか売ろう」と空き家のままにしているうちに期限が来てしまうと、この大きな控除を受けられなくなります。
自分の空き家は対象?(対象になる家・ならない家)
まずは、お住まいだった家が対象になりそうかを確認しましょう。
| 特例の対象になりやすい空き家 | 対象にならない空き家 |
|---|---|
| 昭和56年(1981年)5月31日以前に建てられた一戸建て | 昭和56年6月1日以降に建てられた家 |
| 相続の直前に被相続人がひとりで住んでいた | 被相続人以外に同居していた人がいた |
| 区分所有登記がされていない建物(主に戸建て) | マンションなど区分所有建物 |
| 相続後、賃貸・居住・事業に使っていない | 相続後に貸した・住んだ・店舗等に使った |
| 売却代金が1億円以下 | 売却代金が1億円を超える |
これらに加えて、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが必要です。
老人ホームに入っていた場合は?
亡くなる前に老人ホーム等へ入所していて、相続の直前は空き家だった——というケースも、一定の要件を満たせば対象になります(国税庁 No.3307)。「最後は施設にいたから対象外」と早合点せず、確認してみてください。
売るときの3つの方法(耐震改修・解体・買主が工事)
この特例は、昭和56年以前の旧耐震の家をそのまま売っただけでは使えません。①耐震基準を満たすように改修する、②取り壊して更地にするのどちらかが原則です。さらに2024年からは、③現状のまま売って、買主が工事するパターンも認められました。
| 売り方 | 工事を誰が・いつ | 広島市の確認書の様式 |
|---|---|---|
| ①耐震改修して売る(耐震基準を満たす家として売却) | 売主が譲渡の前に改修 | 様式1-1 |
| ②取り壊して更地で売る | 売主が譲渡の前に解体 | 様式1-2 |
| ③現状のまま売り、買主が工事(2024年〜) | 買主が引き渡し後、翌年2月15日までに耐震改修または解体 | 様式1-3 |
③が加わったことで、「売主が先に費用をかけて工事しなくても売れる」ようになり、制度はかなり使いやすくなりました。
ここが、まさに私たちの出番でもあります。①の「耐震改修して売る」を選ぶなら、まず耐震診断で家の状態を確認し、必要に応じて屋根の軽量化を含む耐震改修を行います。広島市の旧耐震木造住宅なら、耐震改修の補助金が使える場合もあります。「直して売る」と「壊して売る」のどちらが向くかは、建物の傷み具合と費用しだいです。
いくら税金が変わる?(目安の試算)
イメージしやすいよう、概算で試算してみます(あくまで目安です)。
税額の目安(概算・実際は条件で変わります)
例:相続した実家を 1,500万円 で売却し、取得費が不明なので概算取得費は 75万円(売却価額の5%)、解体・仲介などの 譲渡費用を150万円 とします。
このとき売却益(譲渡所得)は 約1,275万円。3,000万円特別控除を使えば 課税対象は0円 になり、本来かかるはずの 約259万円(1,275万円 × 20.315%)の税負担が、計算上ゼロになります。
※実際の税額は取得費・諸費用・各種要件で変わります。最終的な税額は税理士・税務署にご確認ください。
売却益が3,000万円を超えなければ、課税がゼロになることも珍しくありません。だからこそ「条件を満たして期限内に売れるか」が、手取りを大きく左右します。
メリットと、見落としやすい注意点
| メリット | 注意点・デメリット |
|---|---|
| 売却益から最高3,000万円を控除でき、税負担を大きく抑えられる | 期限が「相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日」までと短い |
| 2024年から買主が工事してもよくなり、売りやすくなった | 確認書の申請・書類集めに日数がかかる(早めの着手が必要) |
| 老人ホーム入所後に空き家になった家も、一定要件で対象 | マンションなど区分所有建物は対象外 |
| 相続税の負担を抑える別の特例(取得費加算)と「選んで」使える | 相続人が3人以上だと1人あたり2,000万円に下がる(2024年〜) |
「取得費加算の特例」とは併用できません
相続税を払った人が使える「相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例」とは、どちらか一方の選択になります(同時には使えません)。どちらが有利かは相続税額や売却益によって変わるため、税理士に試算してもらうのが確実です。
確認書「被相続人居住用家屋等確認書」はどこでもらう?
この特例を使うには、確定申告のときに 市区町村が発行する「被相続人居住用家屋等確認書」 を添える必要があります。
- 広島市:お住まいの区を担当する 区役所の建築課(所管:都市整備局 指導部 建築指導課/電話 082-504-2288)が窓口です。前のセクションの売り方に応じて、様式1-1(耐震改修)/様式1-2(解体して更地)/様式1-3(買主が工事)を選んで申請します。
- 東広島市:市の住宅・建築担当課が窓口です。様式や必要書類は市の公式ページでご確認ください。
確認書は「早めの準備」がカギ
確認書の申請には、電気・水道の使用中止日が分かる書類や、相続後に空き家だったことを示す書類など、後から集めにくいものが必要です。申請から交付まで日数もかかり、確定申告期(2〜3月)は窓口が混み合います。売却を考え始めた段階で、早めに準備しておくと安心です。
広島市・東広島市で、相続した旧耐震の空き家を「耐震改修して売るか / 取り壊して売るか」迷われている方へ。インハートでは、現地を見たうえでの 耐震診断・改修のご相談やセカンドオピニオン を承っています。売り込みはいたしません。相談だけでも歓迎です。
- お電話:050-1725-9907(平日9-18 / 土9-17 / 日祝休)
- お問い合わせフォーム / LINE公式(友だち追加 `https://lin.ee/89dvnfL`)
現場から:後悔したケースと、納得したケース
田中さん(仮名・広島市・60代)— 期限を逃して後悔
相続した実家を「いつか売ろう」と空き家のまま置いていたら、気づけば相続から3年が過ぎていました。特例の期限(3年を経過する日の属する年の12月31日)を過ぎてしまい、3,000万円控除は使えませんでした。「もっと早く動いていれば」と悔やまれます。
佐藤さん(仮名・東広島市・50代)— 耐震改修して納得の売却
昭和55年築の旧耐震の実家。先に耐震診断を受け、屋根の軽量化を含む耐震改修を行って「耐震基準を満たす家」として売却しました。特例の対象になり税負担も抑えられ、買い手にも「地震に強い家」として安心して引き渡せました。
よくある質問(FAQ)
Q. 相続した空き家を売れば、必ず3,000万円が控除されますか?
A. いいえ。昭和56年5月31日以前の建築、相続直前に被相続人がひとり住まい、区分所有でない、相続後に使っていない、売却代金1億円以下など、複数の条件をすべて満たす必要があります。(2026年6月時点)
Q. マンション(区分所有)でも使えますか?
A. 使えません。この特例の対象は、区分所有建物登記がされていない家屋(主に一戸建て)です。
Q. 古い実家で取得費がわかりません。どう計算しますか?
A. 取得費が不明なときは「売却価額の5%」を概算取得費として計算できます。実際の税額は税理士・税務署にご確認ください。
Q. 解体してから売るのと、買主に解体してもらうの、どちらがよいですか?
A. 2024年から、買主が引き渡し後(翌年2月15日まで)に耐震改修・解体をしても対象になりました。売主が先に解体すると、更地の固定資産税や建物滅失登記などの負担が出ます。どちらが向くかは状況しだいなので、税理士と建築の両面で検討するのがおすすめです。
Q. 確認書はどこでもらえますか?(広島市・東広島市)
A. 市区町村の窓口で交付されます。広島市は各区役所の建築課(都市整備局 建築指導課)が窓口です。東広島市は市の住宅・建築担当課にご確認ください。申請から交付まで日数がかかるため、早めの準備を。
まとめ
- 相続した空き家を売って条件を満たすと、売却益から 最高3,000万円(相続人3人以上は2024年以降1人2,000万円)を控除できる。
- 対象は 昭和56年5月31日以前の一戸建て で、相続直前に被相続人がひとり住まい、区分所有でない、相続後に使っていない、売却代金1億円以下など。
- 売るときは 耐震改修・解体・(2024年〜)買主が工事 のいずれかが必要。期限は相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、制度自体は2027年12月31日の譲渡まで。
- 必要書類「被相続人居住用家屋等確認書」は市区町村(広島市は区役所建築課)で交付。集めにくい書類があるため早めの準備を。
税金の話は複雑に見えますが、旧耐震の空き家では「直して売るか・壊して売るか」という建物側の判断が、特例を使えるかどうかにも、買い手の安心にも直結します。税額は税理士に、家の状態と工事の判断は私たちに——広島市・東広島市で空き家の扱いに迷われたら、お気軽にご相談ください。
困りごとの入口は住まいの総合相談に、相続した空き家で最初にやるべきことは「相続した実家が空き家に——何から始めればいい?」にまとめています。
出典(2026年6月時点で確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」 — 控除額・適用期間(令和9年12月31日まで)・対象家屋の3要件・譲渡時の要件(耐震改修/取壊し、令和6年改正で買主工事も対象)・売却代金1億円以下・取得費加算との併用不可。
- 国税庁 タックスアンサー No.3307「被相続人が老人ホーム等に入所していた場合の被相続人居住用家屋」 — 老人ホーム入所時の取扱い。
- 国土交通省「空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)」 — 制度の目的・令和9年12月31日までの延長・令和6年改正(買主による工事)。
- 広島市「被相続人居住用家屋等確認書の交付(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除関係)」 — 確認書の申請窓口(区役所建築課)・様式1-1〜1-3。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の税額や適用の可否は、建物の状態・相続の状況・売却の条件によって異なります。税務の最終的な判断は、税理士または所轄の税務署にご確認ください。確認書の要件・必要書類は各市区町村の公式ページで最新をご確認ください。
著者・運営者情報
綾野 利郎(合同会社インハート 代表) 二級建築士・二級施工管理技士。広島市・東広島市で、旧耐震木造住宅の瓦→板金屋根への葺き替えによる耐震改修と、住宅用太陽光発電を手がける。診断から施工管理まで有資格者が一貫して担当し、「売り込まない専門家」として住まいの相談に対応している。

