木造住宅の耐震改修、費用はいくら?工法別の相場と広島市の補助金を二級建築士が解説

木造住宅の耐震改修の費用について、建築士が図面と電卓を前に高齢のご夫婦へ相場と補助金を説明しているイラスト。広島市・東広島市の耐震改修相談のイメージ

※この記事は、合同会社インハート 代表(二級建築士・二級施工管理技士)が解説しています。費用相場・制度の数値は 2026年7月時点 のものです。補助金・制度の最新情報は必ず公式ページでご確認ください。

「耐震改修をした方がいいのは分かっているけれど、いくらかかるのか見当がつかない」——広島でご相談を受けるなかで、いちばん多い質問です。

金額の見当がつかないまま見積もりを取るのは、誰でも不安です。そこでこの記事では、公的な調査データをもとにした費用の相場と、壁・接合部・基礎・屋根という工法別の目安、そして広島市の補助金まで、広島で旧耐震住宅の耐震改修を手がける二級建築士の立場から整理します。

読み終えるころには、「うちの場合はだいたいこのくらい」という予算の物差しと、費用を抑える具体的な手順が持てるはずです。

✅ この記事の結論(先にお伝えします)

  • 木造住宅の耐震補強工事の費用は 平均約161万円(旧耐震の家は平均約183万円)。100〜150万円の価格帯がもっとも多いという公的データがあります。
  • 工事の中心は 壁の補強(筋かい・構造用合板)。これに 接合部の金物・基礎の補強・屋根の軽量化 を家の状態に応じて組み合わせます。
  • 広島市には 工事費の80%・上限115万円/戸 の補助があります(令和8年度)。ただし募集は例年4月の短期間・抽選のため、来年度を狙うなら耐震診断を先に済ませておくのが現実的です。
  • 費用は「先に耐震診断で補強箇所を絞る」「内装リフォームと同時に行う」ことで抑えやすくなります。
  • 不安なときは有資格者に相談を。売り込みはいたしません。(2026年7月時点)

目次

耐震改修のゴールは「評点1.0以上」

耐震改修の費用の話をする前に、「どこまでやれば終わりなのか」を確認しておきましょう。ゴールが決まらないと、金額の妥当性も判断できないからです。

木造住宅の耐震性は、耐震診断で 上部構造評点 という数値で評価されます(日本建築防災協会の診断法によります)。

上部構造評点判定
1.5以上倒壊しない
1.0以上〜1.5未満一応、倒壊しない
0.7以上〜1.0未満倒壊する可能性がある
0.7未満倒壊する可能性が高い

耐震改修は、この評点を 1.0以上(「一応、倒壊しない」)に引き上げることを目標にするのが一般的です。広島市の補助金も「評点0.7未満の住宅を1.0以上にする改修」が対象です。

数字の裏付けもあります。2016年の熊本地震では、被害が集中した益城町中心部の悉皆調査(全数調査)で、旧耐震基準(1981年5月以前)の木造住宅の28.2%が倒壊・崩壊した一方、2000年基準以降の住宅では2.2%でした(国土交通省の委員会報告)。基準を満たすように直すことには、データで確認できる効果があります。

出発点は耐震診断です。まだ受けていない方は、耐震診断の流れと費用(相場5万〜30万円、広島市は補助あり)から始めてください。


耐震改修工事の費用相場はいくら?(平均と最多価格帯)

公的に確認できる調査データを2つ並べます。

調査費用のデータ
木耐協(日本木造住宅耐震補強事業者協同組合)の施工実績調査耐震補強工事の平均額 161万4,920円。旧耐震(1981年5月以前)は 平均182万9,944円、新耐震(1981年6月〜2000年5月)は平均145万9,843円
日本建築防災協会「木造住宅の耐震改修の費用」100〜150万円の価格帯がもっとも多い。2階建てでも半数以上はおおむね190万円以下

つまり、木造住宅の耐震改修は「100〜200万円の範囲に収まることが多く、平均は約161万円。旧耐震の家はやや高めの約183万円」というのが実勢です。

もちろんこれは平均値です。壁を数か所補強するだけなら数十万円で済む家もあれば、基礎の補強や屋根の葺き替えまで組み合わせて300万円を超える家もあります。幅が出る理由は、次の「工法」を見ると分かります。


どんな工事をするの?(主な4つの工法と費用の目安)

耐震改修は「家を丸ごと作り直す」工事ではありません。診断で弱いと分かった部分に、次の4つを組み合わせて評点を引き上げます。

工法内容費用の目安
① 壁の補強筋かいの追加や構造用合板の張り付けで、地震の力に耐える壁(耐力壁)を増やす1か所あたり 10万〜25万円程度(内装・外装の復旧範囲で変動)
② 接合部の金物補強柱と土台・梁の接合部を金物で固定し、柱の引き抜けを防ぐ1か所あたり数万円程度(壁の補強とあわせて実施することが多い)
③ 基礎の補強鉄筋の入っていない基礎に、鉄筋コンクリートを打ち増して一体化する1mあたり 4万〜5万円程度
④ 屋根の軽量化重い瓦屋根を金属屋根に葺き替え、建物にかかる地震力そのものを減らす140万〜200万円程度(瓦屋根の葺き替え費用の記事で詳説)

このうち、実際の工事でもっとも多いのは ①壁の補強 です。木耐協の調査では、耐震補強工事をした人の 約9割が壁の補強を実施しています。

「平均161万円」の内訳イメージ(検算)
例えば評点0.7未満の2階建てを1.0以上に上げる場合、壁の補強が6〜8か所必要になることが珍しくありません。1か所10万〜25万円とすると壁だけで 約60万〜200万円。これに接合部の金物と内装の復旧を加えると、ちょうど「最多価格帯100〜150万円・平均161万円」に重なります。相場データと工法単価は、きちんと符合しているわけです。
なお、壁の単価に幅があるのは工事そのものより 仕上げの復旧範囲(壁紙だけか、外壁も触るか)の差が大きいためです。見積もりでは「補強何か所・復旧はどこまでか」の内訳を確認してください。

④の屋根の軽量化は金額が大きい一方、建物全体の地震力を減らすため評点の底上げに効きます。ただし、屋根の軽量化だけで評点1.0以上にするのは原則難しく、壁の補強との組み合わせが基本です。屋根がすでに傷んでいて葺き替え時期が近いなら、「屋根の更新と耐震化を一度に済ませる」選択肢として費用対効果が高くなります。


わが家の費用はどっち寄り?(抑えやすい家・かさみやすい家)

同じ築年数でも、費用は家の状態でかなり変わります。目安として、ご自宅がどちらに近いか確認してみてください。

費用が抑えやすい家費用がかさみやすい家
耐震診断を受けていて、補強箇所を絞り込める診断をせず「とりあえず全体に」補強しようとしている
基礎に鉄筋が入っている(1981年以降の基準)基礎が無筋コンクリート・玉石基礎
壁の配置バランスが比較的よい南面が大開口で壁が少ない・壁の配置が偏っている
雨漏り・シロアリなどの劣化がない雨漏り・シロアリの被害があり、補修が先に必要
内装リフォームの予定があり、同時に工事できる補強のためだけに内装をはがして復旧する

右側に当てはまる項目が多くても、「だから全部やるしかない」わけではありません。診断結果をもとに効果の大きい箇所から優先順位をつけることで、予算内に収める計画は立てられます。ここは設計者の腕の見せどころです。


費用を抑えるには?(補助金・同時工事・優先順位)

① 広島市の補助金:工事費の80%・上限115万円(令和8年度)

広島市には、旧耐震の木造住宅の耐震改修に対する手厚い補助があります。

項目令和8年度の内容
補助率・上限耐震改修工事費の 80%・上限115万円/戸
対象住宅1981年(昭和56年)5月31日以前に着工した木造(在来軸組・伝統的構法)、2階建て以下、上部構造評点0.7未満 等
募集例年4月の短期間(令和8年度は4月15日〜28日)・耐震改修8戸・応募多数の場合は抽選
最重要ルール市の交付決定通知を受け取る前に契約・着工すると対象外

注意したいのは日程です。令和8年度の申し込みは4月で締め切られているため、これから準備する方は来年度の募集が現実的な目標になります。募集期間は毎年2週間ほどしかないので、「募集が始まってから診断を受ける」のでは間に合いません。今年のうちに耐震診断と改修計画を済ませておき、募集開始と同時に申し込む——これが補助金を使う王道の段取りです。制度の詳細は広島市の耐震改修補助金の記事にまとめています。

東広島市にお住まいの方は、東広島市の耐震改修補助金|診断は1万円・改修は最大100万円を二級建築士が解説で診断1万円・改修最大100万円の制度を解説しています。そのほかの市町でも、広島県が市町ごとの支援制度の窓口ページを公開しています(記事末の出典にリンクがあります)。

このほか、耐震改修には所得税や固定資産税の優遇が設けられてきましたが、年度の税制改正で内容が変わるため、実施年の最新情報を国土交通省・税務署でご確認ください。

② 内装・屋根リフォームと同時に行う

壁の補強費用のかなりの部分は、内装をはがして戻す「復旧」の費用です。壁紙の張り替えや間取り変更、屋根の葺き替えなど、もともと予定していたリフォームと同時に耐震改修を行うと、復旧や足場の費用を共有できて総額を抑えられます。

③ 診断結果で優先順位をつける

予算がどうしても限られる場合も、寝室や居間など滞在時間の長い部屋に面した壁から、効果の大きい順に補強する段階的な進め方があります。「全部やるか、何もしないか」の二択ではありません。

広島市・東広島市で「うちの場合はいくらになるか」を知りたい方へ。インハートでは、現地を拝見したうえでの 耐震改修の概算費用のご相談・他社見積もりのセカンドオピニオン を承っています。売り込みはいたしません。相談だけでも歓迎です。

  • お電話:050-1725-9907(平日9-18 / 土9-17 / 日祝休)
  • お問い合わせフォーム / LINE公式(友だち追加 `https://lin.ee/89dvnfL`)

耐震改修のメリットと注意点

メリット注意点・デメリット
評点1.0以上で「一応、倒壊しない」水準へ。効果はデータで裏付けあり平均約161万円とまとまった費用がかかる
広島市なら工事費の80%(上限115万円)の補助が使える補助は募集戸数が少なく抽選。申請順序を誤ると対象外
住みながら工事できる場合が多い工事中は部屋ごとに家具の移動や養生が必要
リフォームと同時なら復旧費を節約できる劣化(雨漏り・シロアリ)があると先に補修費がかかる

デメリットも含めて書きましたが、費用の不確実性は診断を先に受けることでほぼ解消できます。「いくらかかるか分からない」の答えは、見積もりの前の診断にあります。


現場から:後悔したケースと、納得したケース

山本さん(仮名・広島市・70代)— 診断なしで契約して後悔
訪問してきた業者に「壁に金具を付ければ安心」と勧められ、耐震診断のないまま数十万円の補強工事を契約。後日別の専門家に見てもらうと、評点を計算できる根拠資料がなく、どれだけ効果があったのか分からない工事になっていました。「先に診断を受けて、補助金のことも調べてから決めればよかった」と話されていました。
(信頼できる業者の見分け方は別記事にまとめています)

岡田さん(仮名・東広島市・60代)— 診断→計画→補助活用で納得
昭和54年築の2階建て。まず耐震診断を受けて評点0.6と判明し、壁の補強7か所+接合部金物の計画を作成。市の補助制度を使い、自己負担を大きく抑えて評点1.1まで改修できました。「金額の根拠が数字で見えたので、安心して進められた」とのことでした。


よくある質問(FAQ)

Q. 木造住宅の耐震改修の費用は、結局いくらぐらいですか?
A. 公的な調査では平均約161万円、100〜150万円の価格帯がもっとも多いというデータがあります。旧耐震(1981年5月以前)の家は平均約183万円とやや高めです。壁数か所の補強なら数十万円、基礎補強や屋根の軽量化まで組み合わせると300万円を超える場合もあります。(2026年7月時点)

Q. 広島市の補助金はいくらもらえますか?
A. 令和8年度は耐震改修工事費の80%・上限115万円/戸です。ただし募集は例年4月の短期間で戸数も限られ(令和8年度は8戸)、応募多数の場合は抽選です。市の交付決定前に契約・着工すると対象外になる点にご注意ください。(2026年7月時点。最新は広島市公式ページでご確認ください)

Q. 工事にはどれくらいの期間がかかりますか?
A. 壁の補強数か所なら1〜2週間程度が目安です。基礎の補強や屋根の葺き替え(10日〜2週間程度)を組み合わせると、全体で1か月前後になることもあります。規模と天候によって変わるため、見積もり時に工程表で確認してください。

Q. 住みながら工事できますか?
A. 多くの場合可能です。部屋ごとに順番に工事を進めれば、仮住まいなしで完了できるケースが大半です。ただし工事する部屋の家具の移動や、日中の騒音・ほこりは避けられないため、生活動線を工事店と相談しておくと安心です。

Q. どこまでやれば「安心」といえますか?
A. 一般的な目標は上部構造評点1.0以上(「一応、倒壊しない」)で、広島市の補助金もこの水準への改修が対象です。予算に余裕があれば1.5以上を目指す選択肢もあります。まず耐震診断で現状の評点を確認し、目標との差分から工事内容を決めるのが順序です。


まとめ

  • 木造住宅の耐震改修費用は 平均約161万円、最多価格帯は100〜150万円(旧耐震は平均約183万円)。
  • 工事の中心は 壁の補強(1か所10万〜25万円程度)。接合部金物・基礎補強・屋根の軽量化(140万〜200万円) を家の状態に応じて組み合わせる。
  • 広島市の補助は 工事費の80%・上限115万円(令和8年度)。ただし募集は例年4月の短期・抽選のため、来年度に向けて今から耐震診断を済ませておくのが王道の段取り。
  • 費用を抑える鍵は「診断で補強箇所を絞る」「リフォームと同時に行う」「優先順位をつける」の3つ。

「いくらかかるか分からない」が耐震改修のいちばんの壁ですが、相場のデータと診断結果が揃えば、費用は根拠を持って見積もれます。住まいの悩みがどこから手をつけるべきか分からない方は、住まいの総合相談の記事もどうぞ。広島市・東広島市で耐震改修をお考えの方は、お気軽にご相談ください。売り込みはいたしません。

そもそも広島の地震リスクをどう見積もればよいか、建築時期のどこが分かれ目になるかは、広島の活断層「30年確率 不明」とは?令和8年熊本地震から考える木造住宅の備え【広島市・東広島市】にまとめています。


出典(2026年7月時点で確認)

  • 木耐協(日本木造住宅耐震補強事業者協同組合)「耐震補強工事の平均額【木耐協 調査データ発表】」 — 平均161万4,920円・旧耐震182万9,944円・新耐震145万9,843円。 https://www.mokutaikyo.com/information/32/
  • 一般財団法人日本建築防災協会 リーフレット「木造住宅の耐震改修の費用」(茨城県ウェブサイト掲載) — 工事費は100〜150万円の価格帯が最多。 https://www.pref.ibaraki.jp/doboku/kenshi/kikaku/documents/hiyou.pdf
  • 国土交通省「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告(2016年9月) — 益城町中心部の悉皆調査で旧耐震木造の28.2%が倒壊・崩壊、2000年基準以降は2.2%。 https://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_000633.html
  • 広島市「住宅の耐震化を応援します!」 — 令和8年度 耐震改修補助(80%・上限115万円/戸)・対象要件・募集期間・交付決定前の契約着工不可。 https://www.city.hiroshima.lg.jp/living/sumai/1021346/1026338/1018628.html
  • 広島県「広島県住宅耐震化促進支援制度」 — 県内市町の住宅耐震化支援の窓口。 https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/taishin-madoguchi/taishinhojo-jyutaku.html

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。費用は建物の状態・工事内容・施工会社によって異なります。補助金・税制は年度によって内容が変わるため、適用の可否や最新の条件は広島市・お住まいの市町の公式ページ、または所管の行政庁でご確認ください。


著者・運営者情報

綾野 利郎(合同会社インハート 代表) 二級建築士・二級施工管理技士。広島市・東広島市で、旧耐震木造住宅の瓦→板金屋根への葺き替えによる耐震改修と、住宅用太陽光発電を手がける。診断から施工管理まで有資格者が一貫して担当し、「売り込まない専門家」として住まいの相談に対応している。


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この記事を書いた人

合同会社インハート 代表。二級建築士・二級施工管理技士。広島市・東広島市で、旧耐震木造住宅の屋根葺き替えによる耐震改修と、住宅用太陽光発電を手がける。診断から施工管理まで有資格者が一貫して担当し、「売り込まない専門家」として住まいの相談に対応している。

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