瓦屋根の緊結は既存の家にも必要?2022年の基準改正の対象を工事別に整理【広島市・東広島市】

木のテーブルを俯瞰した構図で、瓦屋根の伏図を指さす手と、瓦の緊結金具が写った施工写真、和瓦のサンプル、メジャーや老眼鏡が並ぶイラスト。2022年の瓦屋根の緊結基準がどの工事に適用されるかを整理する記事のアイキャッチ

※この記事は、合同会社インハート 代表(二級建築士・二級施工管理技士)が解説しています。法令・制度の内容は 2026年8月31日時点 で条文と公式ページを確認したものです。個別の建物への適用は、所管行政庁または設計者にご確認ください。

✅ この記事の結論(先にお伝えします)

  • 2022年(令和4年)1月1日に変わったのは、屋根ふき材の緊結について国が定める構造方法(昭和46年建設省告示第109号ほか)です。
  • 対象は、その日以後に工事に着手する新築・増築・改築などです。基準日は契約日でも完成日でもなく、着工日です。
  • 施行の時点ですでに適法に建っていた家が、この改正によって新しい基準に合わなくなった場合は、建築基準法第3条第2項によりその規定は適用されません(いわゆる既存不適格)。この改正を理由に、今ある瓦屋根を直ちに直す義務は生じません。
  • ただし、義務がないことと、確認しなくてよいことは別です。留め付けの状況、今後の改修方針は、義務とは別の問いとして考えます。
  • 自宅の瓦がどう留め付けられているかは、施工年代だけでは判断できません。まず図面・見積書・施工写真などの記録から確かめます。
  • 「義務化されたので直さないと違法だ」と説明されたときは、対象となる工事の種類・着工日・根拠資料を、文書で確認してください(2026年8月時点)。

目次

「瓦の緊結が義務化された」と聞いたとき、分けて考えたい3つの問い

「2022年から瓦の留め付けが義務化された」という説明を自宅に当てはめるには、いまの建物の状態と、これから行う工事の内容を分けて確認する必要があります。広島県も「瓦屋根の緊結方法に関する基準の改正(令和4年1月1日施行)について」というページを設け、一般の方向けと工事業者向けの2種類の資料を配布しています。

こうした案内は、要点を短く伝えるために「すべての瓦」「新築時のすべての建築物」といった簡潔な表現を使います。一方で、実際にどの建物のどの工事が対象になるかは、建築基準法の条文の組み合わせで決まります。説明の粒度が違うだけで、どちらかが誤っているわけではありません。 そこで本記事では、公式資料の内容をお住まいの方が判断できる単位に置き換えて整理します。

分けたい問いは3つです。

問い答えの決まり方
① 法律上、いま直す義務があるか工事の種類と着工日で決まります
② 自宅の瓦が実際にどう留め付けられているか記録と現地の調査で確かめます(築年数では分かりません)
③ これから工事をするなら、どの仕様で施工してもらうか見積・契約の段階で確認します

①と②と③は、それぞれ別の問いです。①の答えが「義務はない」であっても、②と③を考える理由はなくなりません。


2022年1月に変わったのは、屋根ふき材の「構造方法」です

建築基準法施行令第39条は、屋根ふき材について次のように定めています。

屋根ふき材、内装材、外装材、帳壁その他これらに類する建築物の部分及び広告塔、装飾塔その他建築物の屋外に取り付けるものは、風圧並びに地震その他の震動及び衝撃によつて脱落しないようにしなければならない。
2 屋根ふき材、外装材及び屋外に面する帳壁の構造は、構造耐力上安全なものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものとしなければならない。
— 建築基準法施行令 第39条第1項・第2項

この第2項でいう「国土交通大臣が定めた構造方法」を具体的に示しているのが、昭和46年建設省告示第109号です。国土交通省は、令和元年房総半島台風の被害調査を踏まえ、この告示(および平成17年国土交通省告示第566号、平成12年建設省告示第1454号)を改正し、令和4年1月1日から施行しました。

国土交通省は、この改正について「『瓦屋根標準設計・施工ガイドライン』に準拠した『ガイドライン工法』を建築基準法の告示基準に位置付け、新築時の全ての建築物に義務付ける」と説明しています。

「ガイドライン工法」は、告示に適合する方法のひとつです

「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」は、2001年(平成13年)に、強風や地震に対する脆弱性を改善するために業界団体が制定した技術指針です。令和2年に改訂され、2021年改訂版が2021年7月1日に発行されています(発行:全日本瓦工事業連盟・全国陶器瓦工業組合連合会・全国PCがわら組合連合会・日本建築防災協会、監修:国土交通省国土技術政策総合研究所・建築研究所)。

全日本瓦工事業連盟は、令和元年房総半島台風の屋根被害調査でガイドライン工法による屋根にほとんど被害がなかったことが検証され、ガイドライン工法が改正告示109号において耐震性・耐風性が確保された緊結法として位置付けられた、と説明しています。

「ガイドライン工法でなければ違法」ではありません
告示が求めているのは、大臣が定めた構造方法によることです。ガイドライン工法は、その基準を満たすものとして位置付けられた方法です。全日本瓦工事業連盟も、ガイドラインの役割を「法令の構造計算規定への対応方法を示す」ことと説明しています。設計上どの方法を用いるかは、建物の条件と設計者の判断によります。
なお、このガイドラインが対象としているのは粘土瓦および厚形スレートの施工工事です。2022年にすべての屋根材の基準が一斉に変わったわけではありません。


既存の瓦屋根に、ただちに新しい基準への適合は求められません

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。建築基準法第3条第2項は、次のように定めています。

この法律又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の施行又は適用の際現に存する建築物若しくはその敷地又は現に建築、修繕若しくは模様替の工事中の建築物若しくはその敷地がこれらの規定に適合せず、又はこれらの規定に適合しない部分を有する場合においては、当該建築物、建築物の敷地又は建築物若しくはその敷地の部分に対しては、当該規定は、適用しない。
— 建築基準法 第3条第2項

読みどころは「施行又は適用の際現に存する建築物」と「これらの規定に適合せず」の2つです。2022年1月1日の施行の時点ですでに存在していた(または工事中だった)適法な建物が、この改正によって新しい基準に適合しなくなった場合、その規定は適用されません。これがいわゆる「既存不適格」で、違反建築物とは異なります。この改正を理由に、ただちに工事をしなければならない、ということにはなりません。

なお、もともと別の規定に違反していた建物は、この扱いの対象外です(同条第3項第1号)。既存不適格は「昔の基準のままでよい」という意味であって、「何をしていてもよい」という意味ではありません。

では、いつ新しい基準がかかるのか——基準日は「着工日」です

同じ第3条の第3項は、第2項が適用されない場合を挙げています。そのうち第3号が次のものです。

三 工事の着手がこの法律又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の施行又は適用の後である増築、改築、移転、大規模の修繕又は大規模の模様替に係る建築物又はその敷地
— 建築基準法 第3条第3項第3号

条文が「工事の着手」と書いているとおり、判断の基準日は着工日です。契約した日でも、引き渡された日でもありません。

工事の種類ごとに整理すると

あなたの状況2022年1月1日以後に着工する場合の扱い
新築する改正後の基準によります
増築・改築をする改正後の基準によります(その工事に係る部分)
屋根ふき材だけを葺き替える/カバー工法大規模の修繕・模様替に該当しないとされています
下地・構造材まで含めて広い範囲を改修する「大規模の修繕又は大規模の模様替」に当たるかどうかで扱いが変わります(下記)
傷んだ箇所だけを部分的に補修する「大規模の修繕又は大規模の模様替」に当たらなければ、第3条第3項第3号の対象になりません
何も工事をしない第3条第2項により、規定は適用されません

※上表は条文の構造を整理したものです。個別の工事がどれに当たるかの判断は、所管行政庁(広島市・東広島市であれば市の建築指導担当課)または設計者にご確認ください。

「全面葺き替え」の扱いが少し複雑な理由

建築基準法第2条第5号は、屋根を「主要構造部」のひとつとしています(壁、柱、床、はり、屋根、階段)。そして同条第14号は、「大規模の修繕」を「建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕」と定義しています(同条第15号が「大規模の模様替」)。

ここで大事なのは、同じ「葺き替え」でも工事の範囲によって扱いが変わることです。国の取り扱いでは、屋根ふき材だけを取り替える葺き替えや、既存屋根の上に重ねるカバー工法は、大規模の修繕・大規模の模様替に該当しないとされています。一方、下地・構造材(野地板・垂木など)を建物の過半にわたって取り替えるような工事は、大規模の修繕又は大規模の模様替に当たり得ます。

この線引きと、確認申請の要否については、国の取り扱い通知に沿って屋根の葺き替えに「確認申請」は必要になった?で整理しています(通知の出典もその記事に掲載しています)。

以下は、その下地まで含む広い範囲の改修を想定した話です。

そうすると先ほどの第3条第3項第3号によって、既存不適格の扱いが外れそうに見えます。ところが、ここにもうひとつ規定があります。

建築基準法第86条の7(既存の建築物に対する制限の緩和)は、第3条第2項によって第20条(構造耐力)などの適用を受けない建築物について、政令で定める範囲内で大規模の修繕などをする場合には、第3条第3項を適用しないとしています。その「政令で定める範囲」を定めているのが建築基準法施行令第137条の12第1項です。

法第三条第二項の規定により法第二十条の規定の適用を受けない建築物についての法第八十六条の七第一項の政令で定める範囲は、大規模の修繕又は大規模の模様替については、当該建築物における当該建築物の構造耐力上の危険性を増大させない全ての大規模の修繕又は大規模の模様替とする。
— 建築基準法施行令 第137条の12第1項

屋根ふき材の緊結を定める施行令第39条は、法第20条(構造耐力)が求める安全性の技術的基準として置かれた規定です(施行令第3章「構造強度」)。法第86条の7は、法第3条第2項により法第20条の適用を受けない既存不適格建築物について、政令で定める範囲内で大規模の修繕などを行う場合には、法第3条第3項を適用しないという特例です。そして施行令第137条の12第1項が、その「政令で定める範囲」を「構造耐力上の危険性を増大させない」ものと定めています。

ただし、これは「法律上そこまでは求められない」という意味であって、「古い留め付け方法のままでよい」という意味ではありません。下地から作り直す工事であれば、どの仕様で施工するかを選ぶ余地がそもそもあります。その選び方は次の章で扱います。

条文をたどると、こういう順番になっています
① 施行令39条2項 … 屋根ふき材は「大臣が定めた構造方法」による
② 告示109号ほかの改正 … その構造方法の中身が変わり、令和4年1月1日施行
③ 法3条2項 … 施行の際に現に存し、その規定に適合しなくなった建築物には、その規定を適用しない(既存不適格)
④ 法3条3項3号 … ただし施行後に着手する増築・改築・移転・大規模の修繕・大規模の模様替は、③が効かない
⑤ 法86条の7 + 令137条の12第1項 … そのうち、構造耐力上の危険性を増大させない大規模の修繕・模様替については、法3条3項を適用しない(=③の扱いが続く)
ここまで分けて初めて、「うちはどれに当たるのか」を考えられます。「義務化」という一語だけでは、ご自宅に必要な対応までは決まりません。

義務がないことと、考えなくてよいことは別です
ここまでは法律上の義務の話です。留め付けの状況を確かめる価値や、いずれ工事をするときにどの仕様を選ぶかは、義務とは切り離して考えます。この記事の後半は、その2つを扱います。


「うちの瓦は緊結されているか」は、築年数だけでは分かりません

では、実際に自宅の瓦がどう留め付けられているかは、どう確かめればよいのでしょうか。

まず前提として、ガイドラインが示された2001年より前に葺かれ、その後改修されていない瓦屋根では、旧来の留め付け方法が残っている可能性があります。 国土交通省国土技術政策総合研究所は、2016年の熊本地震で和瓦の棟などを中心に瓦の脱落被害が多く見られた主な要因を、「瓦を下地に留め付けていない旧来の工法により施工したためです」と説明しています。

ただし、施工年代だけで緊結の状況は判断できません。 2001年より前でも適切に緊結された屋根はありますし、それ以降でもガイドラインどおりとは限りません。

屋根に上がる前に、記録から確かめられることがあります

確かめる先見るところ
新築時の図面・仕様書屋根伏図、屋根仕上げの仕様、瓦の留め付けに関する記載
過去のリフォームの見積書・契約書「葺き直し」「棟の積み直し」などの工事名、施工範囲
過去の工事の施工写真棟の内部、瓦桟、緊結材が写っているもの
工事を依頼した会社当時の施工内容の記録が残っているか

ご自身で屋根に上がることは、おすすめしません
屋根の上は滑りやすく、瓦は踏む位置によって割れます。また、地上からの目視だけで、瓦が下地に緊結されているかを確定することはできません。 棟の内部やビス・緊結線は、外からは見えない位置にあります。記録で判断がつかない場合は、屋根工事に慣れた施工者や建築士に調査を依頼してください。

なお、法的な義務の有無とは別に、既存の屋根を診断するための考え方は公表されています。 国土技術政策総合研究所は「既存建築物の屋根ふき材の耐風診断・耐風補強評価マニュアル(案)」(国総研資料 第1309号)を公表しており、耐風1次診断・耐風2次診断という段階を踏んだ診断と、改修工法の耐風補強評価の考え方が示されています。また、2021年改訂版のガイドラインにも、付録として「瓦屋根の耐震・耐風診断と改修」が収録されています。


葺き替えや大きな改修を予定しているときに、確認したいこと

これから屋根の工事をお考えの場合は、①の「義務があるかどうか」より、③の「どの仕様で施工してもらうか」のほうが実際には重要になります。

国土技術政策総合研究所は、住まい手向けのQ&Aで次のように案内しています。

新築および改修工事の契約前に「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」により設計・施工することが可能であるかを、元請けの担当者に確認されることが推奨されます。
— 国土技術政策総合研究所「屋根瓦を落とさない・飛ばさないための7つのQ&A」Q5

ポイントは「契約前に」「元請けの担当者に」という2つです。工事が始まってからでは、仕様の変更は費用にも工程にも影響します。

見積・契約の段階で聞いておきたいこと

確認することなぜ聞くのか
どの基準・仕様で施工するか「ガイドラインにより設計・施工することが可能か」を契約前に確認します
どの部位を、どう留め付けるか国総研は、旧来工法で弱点になりやすい部位として棟部・半端瓦・勝手瓦、および平部・軒先・けらばの留め付けを挙げています
施工中の写真と記録を受け取れるか完成後は屋根の内部が見えません。国総研は「屋根の施工状況は、写真とともに記録シートに記録してもらうよう、元請けの担当者にご相談ください」と案内しています
下地(野地板)の状態をどう扱うか下地の傷みは、瓦をめくってからでないと分からないことがあります
見積の内訳が仕様まで書かれているか金額だけを並べても、留め付けの方法までは比較できません

資格は手がかりのひとつ。ただし資格だけで決めないでください

瓦屋根工事に関する資格として、国土技術政策総合研究所は「かわらぶき技能士」(厚生労働省の技能検定)、「瓦屋根工事技士」(全日本瓦工事業連盟)、両資格の保有者が受講し学科試験に合格して得られる「瓦屋根診断技士」を挙げ、「ガイドラインの構法に精通した信頼出来る工事店などを選ぶことが推奨されます」としています。

資格の有無は判断材料になりますが、実際に確認したいのは説明の中身と記録です。仕様を説明できるか、施工の記録を残してもらえるか。ここは資格の有無とは別に確かめてください。業者選びの一般的な見方は、耐震改修の業者選びで失敗しないためににまとめています。

見積書を持って相談だけ、という使い方もできます
広島市・東広島市で、屋根の見積書の内容についてのご相談を承っています。売り込みはいたしません。 「この見積で、留め付けの方法まで確認できているか知りたい」「他社の見積を別の目で見てほしい」といったご依頼だけでも構いません。
電話 050-1725-9907(平日9〜18時/土曜9〜17時/日曜・祝日休)/ お問い合わせフォーム / LINE公式アカウント(@737kqotf)


瓦の脱落を防ぐことと、住まい全体の耐震性は、別に確認します

ここは混同しやすいところです。瓦が落ちないようにすることと、建物が倒れないようにすることは、別の問題として扱われています。

  • 2022年の告示改正は、令和元年房総半島台風の被害調査を踏まえたもので、主に強風対策として整理されています。
  • 一方、建物全体が地震に耐えられるかどうかは、壁の量や配置、接合部、基礎、劣化の状況などから総合的に判断します。屋根の留め付けを見ただけでは分かりません。

したがって、瓦を留め直したことをもって、住まい全体の耐震性が確認できたことにはなりません。 屋根の重さと建物の耐震性の関係、および瓦の脱落と建物倒壊が別の現象であることは、広島の活断層「30年確率 不明」とは?で公表資料をもとに整理しています。建物全体の状態を知りたい場合は、耐震診断とは?当日の流れ・費用・補助金をご覧ください。

広島市・東広島市には木造住宅の耐震診断・耐震改修に対する補助制度があります。ただし、補助の対象になる工事の内容や要件は制度ごとに定められており、屋根の留め付けの工事がそのまま対象になるとは限りません。 広島市の耐震改修事業は、耐震診断による上部構造評点を1.0以上にするために必要な補強工事で、建築士が設計・工事監理するものが対象とされています。制度の内容は広島市の耐震改修補助金と東広島市の耐震改修補助金にまとめていますので、適用の可否は、工事の計画段階で市の担当課と設計者にご確認ください。


「義務化されたので直さないと違法」と言われたときの確認先

訪問を受けて、制度の改正を理由に工事を勧められることがあります。

契約を急がず、次の3点を文書で確認してください
1. 対象となる工事の種類は何か(新築・増築・改築・大規模の修繕のどれに当たるという説明か)
2. 基準日をどう考えているか(基準日は着工日です。「2022年以降に建てた家が対象」「契約日で決まる」という説明は、条文の書き方と異なります)
3. 根拠としている資料は何か(告示番号・条文・公式資料の名称を、口頭ではなく書面で示してもらってください)
ご自身で確認したいときは、お住まいの市の建築指導担当課(広島市は都市整備局指導部 建築指導課、東広島市は建築指導課)や、広島県の「瓦屋根の緊結方法に関する基準の改正(令和4年1月1日施行)について」のページで、制度の内容そのものを確認できます。

その場で契約する必要はありません。訪問を受けたときの具体的な対応、断り方、契約してしまった場合のクーリング・オフについては、「屋根が浮いていますよ」と訪問業者に言われたらに手順をまとめています。


工事を検討している方と、そうでない方で、次にすることが変わります

いまのご状況次にすること
当面、屋根の工事を予定していない法律上、この改正を理由に直ちに工事をする必要はありません。図面や過去の工事記録が手元にあるか、確認して保管しておくと、将来の工事のときに役立ちます
雨漏り・瓦のずれなど、気になる症状がある制度の話とは別に、症状としての点検が先です。雨漏りの原因と修理費用をご覧ください
屋根の葺き替えを考えている仕様(どの基準・どの留め付け方法か)と施工記録の扱いを、契約前に確認します。工法の選び方はカバー工法と葺き替えの比較、費用と工程は瓦屋根の葺き替え費用へ
地震への備えとして屋根を考えている屋根だけでは判断できません。耐震診断から始めてください

なお、瓦のまま葺き直す場合の費用は、屋根の面積・形状、下地の状態、土葺きかどうか、既存材の撤去範囲によって大きく変わります。仕様をそろえた見積で確認してください。 瓦からガルバリウム鋼板などへ葺き替える場合の費用の目安(広島市・東広島市の一般的な戸建てで、おおよそ140万〜200万円程度)は、瓦屋根の葺き替え費用に整理しています。


よくある質問(FAQ)

Q. 施行の時点ですでに建っていた瓦屋根の家は、改正後に違反建築物になったのですか?
A. 2022年の告示改正だけを理由に、適法に建てられた建築物が違反建築物になるわけではありません。建築基準法第3条第2項は、規定の施行の際に現に存する建築物が、その規定に適合しない場合には当該規定を適用しないとしています。これが「既存不適格」で、違反建築物とは別のものです。ただし、もともと別の規定に違反していた建物はこの扱いの対象外です(同条第3項第1号)。

Q. 基準日は、契約した日ですか、完成した日ですか?
A. どちらでもありません。建築基準法第3条第3項第3号は「工事の着手」がその規定の施行の後であるかどうかで区別しています。着工日が基準です。

Q. 屋根を全面的に葺き替えると、必ず新しい基準で施工しなければなりませんか?
A. 「必ず」ではありません。まず、屋根ふき材だけを取り替える葺き替えやカバー工法は、大規模の修繕・模様替に該当しないとされています。下地・構造材を建物の過半にわたって取り替える工事は「大規模の修繕又は大規模の模様替」に当たり得ますが、その場合も建築基準法第86条の7と施行令第137条の12第1項により、構造耐力上の危険性を増大させないものについては既存不適格の扱いが継続します。個別の工事がどれに当たるかは、所管行政庁または設計者にご確認ください。なお、法律上の扱いと、実際にどの仕様で施工するかは別の判断です。下地から作り直す工事では、留め付けの方法を契約前に確認しておくことをおすすめします。

Q. 自分の家の瓦が緊結されているか、地上から見て分かりますか?
A. 地上からの目視だけで確定することはできません。瓦を下地に留め付けるビスや緊結線、棟の内部の金具は、外から見える位置にないためです。まず新築時の図面や過去の工事の見積書・施工写真といった記録を確認し、それでも判断がつかない場合に調査を依頼するという順番をおすすめします。

Q. 瓦を留め直せば、地震に強い家になりますか?
A. 瓦の留め付けは、瓦が脱落・飛散しにくくするためのものです。建物全体が地震に耐えられるかどうかは、壁の量や配置、接合部、基礎、劣化の状況などから判断します。別々の確認が必要です。 建物全体については耐震診断をご検討ください。

Q. 瓦屋根はやめて、軽い屋根にしたほうがよいのでしょうか?
A. 一律には決まりません。国土技術政策総合研究所は、瓦屋根について「適切な設計・施工法により、耐震性・耐風性も確保される屋根」としています。屋根を軽くすることが耐震補強の計画に影響することはありますが、どの補強が必要かは建物全体の診断結果によります。屋根の重さと耐震の関係は、瓦屋根は重いと耐震に不利?【前編】と屋根の軽量化は耐震に効くか【後編】の2記事で整理しています。

Q. 広島市の耐震改修の補助金を、瓦の留め付け工事に使えますか?
A. 制度ごとに対象となる工事が定められています。広島市の耐震改修事業は、耐震診断による上部構造評点を1.0以上にするために必要な補強工事で、建築士が設計・工事監理するものが対象とされています。ご計画の工事が対象になるかどうかは、申請の前に市の担当課と設計者にご確認ください。 補助制度の全体像は広島市・東広島市それぞれの記事にまとめています。


まとめ

  • 2022年(令和4年)1月1日に施行されたのは、屋根ふき材の緊結について国が定める構造方法(昭和46年建設省告示第109号ほか)の改正です。根拠となる規定は建築基準法施行令第39条第2項です。
  • 対象は、その日以後に工事に着手する新築・増築・改築などです。基準日は着工日であって、契約日でも完成日でもありません。
  • 施行の時点ですでに適法に建っていた家が、この改正によって新しい基準に適合しなくなった場合は、建築基準法第3条第2項によりその規定は適用されません(既存不適格)。この改正を理由に、いまある瓦屋根を直ちに直す義務は生じません。
  • 屋根ふき材だけの葺き替えやカバー工法は、大規模の修繕・模様替に該当しないとされています。下地・構造材を過半にわたって取り替える工事は「大規模の修繕又は大規模の模様替」に当たり得ますが、構造耐力上の危険性を増大させないものは、法第86条の7と施行令第137条の12第1項により既存不適格の扱いが続きます。
  • 自宅の留め付けの状況は、築年数では判断できません。 図面・見積書・施工写真などの記録から確かめ、分からなければ調査を依頼してください。
  • 工事を予定しているなら、契約前に、どの仕様で施工するか・施工の記録を受け取れるかを確認してください。
  • 瓦の脱落を防ぐことと、建物全体の耐震性は別の確認です。

屋根のことだけ、確かめたいとき

広島市・東広島市で、屋根の現地相談と、お手元の見積書についてのセカンドオピニオンを承っています。売り込みはいたしません。 相談だけ、見積を見てほしいだけ、というご依頼で構いません。工事をしないという結論になっても、まったく問題ありません。

制度そのものの解釈や、ご自宅への適用の可否については、所管行政庁(市の建築指導担当課)が確認先です。当社は建物の状態の確認と、工事の内容・見積についてのご相談をお受けする立場です。広島市・東広島市以外にお住まいの場合は、お住まいの地域の建築士・施工会社にご相談ください。住まいの困りごと全般の入口は住まいの総合相談にまとめています。


出典(2026年8月31日に確認)

いずれも2026年8月31日に確認しました。制度の内容は変わることがありますので、最新は各公式ページでご確認ください。

この記事は一般的な情報の解説です。個別の建物について、どの規定がどのように適用されるかの判断は、所管行政庁(市の建築指導担当課)または設計者にご確認ください。 補助制度の適用可否は、各制度の担当課にお問い合わせください。

著者・運営者情報

綾野 利郎(合同会社インハート 代表) 二級建築士・二級施工管理技士。広島市・東広島市で、旧耐震木造住宅の瓦→板金屋根への葺き替えによる耐震改修と、住宅用太陽光発電を手がける。現地調査から施工管理まで有資格者が一貫して担当し、「売り込まない専門家」として住まいの相談に対応している。


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この記事を書いた人

合同会社インハート 代表。二級建築士・二級施工管理技士。広島市・東広島市で、旧耐震木造住宅の屋根葺き替えによる耐震改修と、住宅用太陽光発電を手がける。診断から施工管理まで有資格者が一貫して担当し、「売り込まない専門家」として住まいの相談に対応している。

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